古書しんて…いやアホウドリのあとはようやくお目当ての古書ほうろうである。去年の不忍ブックストリート以来だ(以下は2013年10月13日の記録である)。
本屋探訪記vol.80:「古書信天翁」は下町にある秘密基地的古本屋さん
谷中銀座を抜けてそのまま直進。すると大通りに出るので右折。真っ直ぐ行って不忍通りが見えてきたら左を向くとある。店舗前の空間が広いのが嬉しい。店頭写真を撮りやすいのだ。
まとめ
時間のない方のためにまとめです。
- 品揃え:カジュアルな本から黒っぽいマニアックな本まで。何でもござれの万能古本屋。
- 雰囲気:これぞ古本屋って雰囲気。アットホーム
- 立地:西日暮里駅から徒歩5分程度
TEL:03-3824-3388
営業時間:月~土 12:00 ~ 23:00/日・祝 12:00 ~ 20:00/水休
URL:http://horo.bz/
Twitter:https://twitter.com/legrandsnes
Facebook:https://www.facebook.com/pages/%E5%8F%A4%E6%9B%B8%E3%81%BB%E3%81%86%E3%82%8D%E3%81%86/381783318563118
店内レイアウト
店頭の百円コーナーは置いておいて店内に入ると驚いた。かなり広い。いや広いというよりは深いか。奥に伸びた店内なのである。
入ってすぐ左手にレジがあり目の前はフライヤーやフリーペーパーの置き場となっているごちゃごちゃ感が古本屋らしい。
右手にガラスケースで壁沿に本棚がぐるりと一周する。もちろん中央にも本棚があって手前に4列(うち1列は奥まで続く)と奥に2列だ。この中央の本棚が終わったところにちょっとした空間がありテーブルとイスが置かれている。ギャラリーとして使っているのだろうか。このときは「ひとりキノコフェス」なる愉快な展示が行われていた。キノコフェス…しかも一人で…その素晴らしいセンスに心打たれたのは公然の秘密だw
品揃え
さてさて。せっかくの古本屋らしい古本屋である。ここは品揃えをメインに書くのが賢明だろう。店舗を右回りに見ていく。
ガラスケースと店舗入口辺
まず入ってすぐの右手にはガラスケースだ。中にはいわゆる古書である。貴重書だろうか。勉強不足が悔やまれる。『円形建築』や『青き眼の半獣神』などだ。
足元が邪魔だと見てみると箱だ。もちろんなかには商品である。雑誌と大判書だ。
その隣は新刊書だ。「古書ほうろう」というから古本だけかと思ったらそうでもないらしい。これは他で聞いた話だが最近は古本屋でも新刊書などを使って工夫をしなければ大変になってきたようなのだ。どこの世界も世知辛くなってきましたなあ。
20代のぼくにまだ溜め息は似合わないので先を急ぐ。あったのは『はじめての編集』や片山杜秀の本、『幸福な広告』、『本屋図鑑』、『ぼくの古本探検記』などだ。
店舗右辺
ここから店舗の右辺となるが全部で15本の長い道のりだ。
長いのでジャンル手前から新入荷、江戸東京、自然、旅・民俗、世界の文学、詩歌・俳句、建築、写真集、美術(国内)、イラストレーション、グラフィックデザイン、タイポグラフィ、映画。
新入荷は篠原一男、『瞬間の山』、『花森安治 戯文集2』、『ビート読本』など。
江戸・東京は『都市の常民たち』、『江戸っ子百話』など。
自然は『木の写真図鑑』、『世界の富士山』など。
旅・民俗は『ラフミュージック宣言』、『島へ免許を取りに行く』など。
世界の文学は『メイスン&ディクスン』、『ナボコフ自伝』、『ホフマン全集』など。文庫もあり。
詩歌・俳句は『交わす言の葉』、高橋睦郎、ハルキ文庫など。
建築は『メタボリズム』、『森と文明』、『ル・コルビュジエの生涯』、雑誌『住宅特集』など。
写真集はアラーキー、雑誌『写真空間』、篠山紀信や洋書など。
イラストレーションは大竹伸朗、都築響一、ディック・ブルーナなど。
グラフィックデザインは『松永真 デザインの世界』や『デザイン街路図』など。
タイポグラフィは『寄席文字』、雑誌『アイデア』、『日本ホーロー広告大図鑑』など。
映画は『日本映画を読む』、『シネマ革命1960』、『サタデイ・ナイト・ムービー』、四方田犬彦など。
奥の突き当たりにはカルチャー系
ようやく突き当った壁にはもちろん本棚。5本あって右から漫画、演劇、音楽である。
漫画は永島慎二、つげ義春、水木しげる、幸村誠、『鉄腕バーディー』など。
演劇は『ハムレットの方へ』、『なぜベケットか』、『寺山修司戯曲集3』など。
音楽はグスタフ・マーラーや『日本と世界の楽譜』、『コンピュータ音楽』、『アメリカ音楽ルーツ・ガイド』、『ストレート・ライフ』など。
左辺の12本
そのままぐるりと左辺に入って奥からレジまで本棚が12本。CD・DVD、児童書、本の本、200円均一コーナーとなっている。
CD・DVDは『東京モンド』や小坂忠、『荒野の決闘』など。
児童書は『はてしない物語』、『くまの子ウーフ』、岩波CD-ROMブック『星の王子様』など。
ここまでが店舗奥の空間に接する棚だ。児童書がここにあるのは親子客への配慮か。
折れ曲がって本の本には『本を旅する』、『量書狂読』、『物語編集力』、『ガール・ジン』、『文庫ハンターの冒険』、『ガタスタ屋の矜恃』、『本は寝転んで』、『「文藝春秋」の研究』など。
このジャンルはそれなりに知っていたつもりなのだがまだまだ勉強不足なことを思い知らされる。
その奥、200円均一コーナーはレジの手前まであり『634』、『ヴィレッジヴァンガードで休日を』、『建築家たちの20代』、雑誌『ユリイカ』、『言いまつがい』など。
やっぱりのごちゃ混ぜ感が堪らない。
中央の本棚たち
壁棚は全て見たのでここでいったん仕切り直そう。店舗入口まで戻って中央の本棚を見ていくこととする。ちなみにこれらの本棚は手前に4列(うち1本は奥まで)奥で2列になっている。
中央1列目は500円均一に歴史・アート・文庫
右から。手前1本目の右側には500円均一コーナーだ。
『メタボリズムの発想』、雑誌『レコードマップ』、『東京ポストモダン』、『刑務所ぐらし』、『大東亜科學綺譚』、『宇宙聖書』、『ヘーゲル「精神現象学」入門』、『うそつきくらぶ』、『不滅』、『もし川がウイスキーなら』など。
回り込んで1本目の左側は歴史とアートと文庫である。
歴史は『憎悪の世紀』、『迷子論』、『古代マヤ文明』など。
アートは『悲しき「ライフ」の伝説』、『内なる画家の眼』など。
文庫はちくま文庫、講談社学術文庫、中公文庫、岩波文庫。あと中公クラシックスも。
2列目は思想・宗教・新書・文庫・文学
振り返って2本目。右側には思想と宗教と新書・文庫。
思想は『ニーチェと哲学』、『世界像革命』、『アンチ・オイディプス』、『ヤーコブソン』などなど。
宗教は『道教と古代日本』、『コーラン』、『キリスト教の2000年』など。
新書・文庫は古い岩波文庫から岩波現代文庫、ソフトバンク新書、平凡社新書などいろいろ。
左側には奥に文学評論があってそこから手前に向かってあいうえお順で日本文学である。あいうえお順というと以前取材した古本屋さんを思い出す。古書往来座。そう考えてみると雰囲気も近い。
文学評論は『日本のルネッサンス人』、『文壇うたかた物語』など。
日本文学は石田千、上田秀人、今野敏、小島信夫、佐々木譲、中井英夫などなど。
奥まで続く3列目は文庫の新入荷・海外文学・その他海外文学・植草甚一とミニコミ系
どんどん見ていこう。何しろ広いのだ。
次の3本目は奥まで続く長い列。他の列は本棚が4本しかなかったがここは7本なのだ。
右側には文庫本新入荷、外国文学アイウエオ順、岩波の赤を中心に海外文学の続き。そして端っこにミニコミ系など自費出版物と新刊だ。最近の古本屋はどこもひと工夫ある。
文庫本新入荷は『ね、愛してる?』、『報道カメラマン』、『花鳥風月の日本史』など。
外国文学アイウエオ順は『まだ人間じゃない』、『手で育てられた少年』、『シロへの長い道』、『ガツン!』など。
その他海外文学には『ペレランドラ』、ハヤカワポケット文庫、『タイタンの妖女』、『リア王』、『シャーロック・ホームズのライヴァルたち』、岩波の赤など。
最後の植草甚一と自費出版物にはもちろん植草甚一が10冊ほどと音楽系がちょっと、『IN THE CITY』、『夜と朝』などリトルマガジン。
足元にブルータスなど雑誌もある。
左側は日本人作家の文庫が奥からあいうえお順である。
有川浩、石持朝海、海堂尊、梶山季之、今野敏、坂口安吾、高村薫、武田泰淳、田辺聖子、筒井康隆、夏目漱石、乃南アサ、橋本治、丸谷才一、三浦しをん、山田風太郎、綿矢りさなど。7本分なのでなかなかの量だ。
4列目は歴史・時代小説
中央手前にある最後の本棚(4本目)の右側には歴史・時代小説。小杉健治、佐伯泰英、司馬遼太郎、藤沢周平など。
左側は奥も含めて100円均一コーナーとなっている。手前は文庫メインで奥は単行本メイン。ジャンルなんてものはないので内容は割愛させて頂く。食の本が多いのが素敵だ。
中央奥の本棚2列
奥2列はまとめて見よう。もちろん右側から。
1列目右側は暮らし・実用である。
『熨斗目』、『家具と人』、『日曜大工』、『アンティーク・ショッピングガイド』、雑誌『Re:s』、雑誌『d design travel』、季刊『銀花』、『ニッポンの手仕事』、『理想の書物』など。足元に箱あって昔の『ポパイ』や『ブルータス』、雑誌『室内』など。
この列の左側は酒食である。素晴らしいのである。
『アジアンティーの世界』、『酒の日本文化』、『地ビール物語』、『編集者の食と酒と』、『日々ごはん』などとほか大判本。特に『編集者の食と酒と』。これ。気になる!
最後に奥二本目の右側は競馬、鉄道、囲碁・将棋、スポーツ。勝負ごとの世界である。
競馬はディック・フラシンス、『調教師物語』など。
鉄道は『日本鉄道物語』、『国鉄の車両』シリーズ、雑誌『鉄道ジャーナル』、雑誌『Rail Magazine』など。
囲碁・将棋は『中原誠実践集』、『最強将棋塾』シリーズなど。
スポーツは『ストライクゾーン』、『プラティニ全記録集』、『虎の意地』、『完全敵地」など。左側は百円コーナーなので既に紹介済だ。
こんな街の古本屋が欲しい
さて、如何だったろうか?
広く深い店内に幅広い品揃え。お買い得コーナー。どこかを思い出す。そう池袋の「古書往来座」だ。
本屋探訪記vol.62:池袋にある「古書 往来座」は古本屋でもなれた街の本屋さんである(2013/1/26)
ぼくは古書往来座を「街の古本屋」と表現した。クラシックな古書店にはない和やかな雰囲気がそこにあったからだ。
「古書ほうろう」にもそれがある。幅広い品揃えもそうだが、ご近所の方とのやり取り。取材中にお話されていたことが何度かあった。小まめに配置された椅子でゆっくり吟味するお客さん。本好きが自然と集まる場になっているのが「古書ほうろう」なのだ。
谷根千にお越しの際にはぜひ寄って行って欲しい。