本屋探訪記vol.75:松陰神社前の「nostos books」は商店街的コミュニティーに根付くことを目指す

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nostos booksのリアル店舗が開店するだって!?

驚くべきニュースはFacebookからやってきた。nostos booksは知人がそのFacebookページに「いいね!」をつけていたことで知ったのだが、定期的に流れてくる入荷の投稿がなかなか面白かったので注目していたネット本屋だった。
ある日、いつものようにFacebookのタイムラインを眺めているとnostos booksさんがリアル店舗を8月12日に開店するという。これは行くしかない。行かなければ本屋好きとしての名が廃る。
そういうわけでプレオープン日の8月11日にお邪魔することにした(以下はその2013年8月11日の記録である)。

まとめ

時間のない方のためにまとめです。
  • 品揃え:デザイン系と幻想文学。加えて他では見たことがないような本がある。
  • 雰囲気:最高!
  • 立地:松陰神社前駅から徒歩6分程度
東京都世田谷区世田谷4-2-12 1F
TEL:03-5799-7982
営業時間:平日/13:00~21:00 土日祝日/12:00〜20:00 水曜定休
URL:http://nostos.jp/
Twitter:https://twitter.com/nostos_books
Facebook:https://www.facebook.com/nostosbooks

松陰神社ってどこ?

行こうと思ったのは良いが場所は松陰神社という名前らしい。困った。聞いたことがない。Google先生にお伺いを立ててみると東急世田谷線の駅らしい。乗ったことのない線。ナビタイム教授にご相談したところ渋谷からバスで30分程度だそうだ。なんでこんなところに…。店主のブログによると商店街の雰囲気が気に入ったかららしいのだが。何はともあれ行ってみなければ始まらない。そう思いながらバスに乗り込んだ。

昔ながらと若者が良い感じに混ざった商店街

バスを降りて松陰神社駅のある北に向かう。日曜日なので基本的に店のシャッターは閉じているが開いているお店には昔ながらの八百屋さんがあったり、かと思えばオシャレなカフェがあったり。
正直、聞いたこともない駅の商店街で勝手なイメージながら寂れているのかと思ってしまっていた。だが、歩いてみると確かに良い雰囲気である。自分の先入観を恥じ入ると同時にこんな場所を見つけた店主に興味を惹かれた。

下北沢カフェ的感性の古本屋

そんな商店街の中にnostos booksはある。全面ガラス張りの入り口の向こう側に見えるのは古い町屋風のオシャレな店内。BGMはカフェミュージック(ぼくの好み! アルバム名を聞いておけば良かった…!!)。店舗の造作は本棚など難しい場所を除いて基本的に手作りだという。
居心地が良いのは店主の愛情がこもっているからだろうか。下北沢あたりにありそうな小さいけれど落ち着けるカフェのような雰囲気だ。

奥はシェアオフィス

店舗は左に長い長方形なのだが実は左奥のレジ隣から奥に入れるようになっている。話を聞くとそのスペースはシェアオフィスとして貸し出しているらしい。本と共にこんな雰囲気の中で仕事ができるなんて素晴らしいことだ。
半分がシェアオフィスと言えば渋谷のSPBSを思い出させる。あちらとは雰囲気がかなり違うがカフェではなくシェアオフィスと本屋を組み合わせるというのは面白い。知っている中ではここで2店目だ。自分でやるときも考えてみよう。

ブックデザインをしたい店主の戦略

取材の前にレジに購入本を持っていき挨拶をする。まるで久しぶりにあった知人のような反応。あれ? お知り合いでしたっけ? と思ったら店主が自分のサイトを知ってくれていた。これは本当に嬉しく。挨拶ついでに少しお話することに。
話によるとデザイナーをやりながらネット本屋をやって一年。元からリアル店舗もやりたかったようでこの松陰神社の店舗はその念願を達成したものらしい。ここで面白いのがブックデザインをすることが店主の目標であること。
本屋をやっているデザイナーとなればそういう依頼も来るだろうという戦略でもあるのだ。ブックデザインもする本屋さんとはなんとも斬新ではないか。

レイアウト

ここでレイアウトについてざっと説明する。

先にも述べたように左に長い長方形の店舗である。
店舗中央には平台にもなる胸くらいの高さの本棚が手前と奥側で3本ずつ。左奥にレジ。奥に本棚が5本ある。これはオフィスとの仕切りだ。店舗右辺は面陳用の飾り棚である。

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男女ユニット二人の選書

デザイナーの店主であるが、さらに話を聞くともう一人、こちらもデザイナーである女性の店主と二人で選書しているらしい。小さいお店なのに二人で選んでいるとは。どんな混ざり具合なのかが気になるのでさっそく品揃えを見ることにする。

中央の本棚 手前側 女性向けコーナー

まず見るのは入ってすぐ目の前の中央本棚だ。
まず、絵本、児童書で海外の絵本が2本分。ファーストブックシリーズや『モモ』、『鏡の中の鏡』、『かいじゅうたちのいるところ』などだ。
残り1本には雑誌『クウネル』や武田花さんの本がたくさんに雑誌『暮らしの手帖』に関する本だ。ここは女性店主の好みだろう。この3本の本棚は女性向けコーナーである。
くつしたくん (ブロンズ新社のFirst Book Series)おうちなのね (First Book Series)鏡のなかの鏡―迷宮 (岩波現代文庫)

ガラス張りの入り口の辺にある飾り棚 隠れるように本の本

振り返ると足元に飾り棚があった。フライヤーや展示品だけかと思いきや古雑誌、本の本もある。お手頃な値段なので思わず買ってしまった。『書店の棚 本の気配』を購入。前から欲しかったんだ。
書店の棚 本の気配

中央の本棚 奥側 デザイン雑誌と読み物コーナー

中央の本棚の奥に回り込む。入り口側から見て右側から見ていこう。
まず1本目は雑誌棚だ。雑誌『アイデア』、雑誌『流行通信』、雑誌『リラックス』など。
続いて真ん中とレジ側で2本は文学と詩集である。蜂飼耳『食うものは食われる夜』、長田弘『本についての詩集』、つげ義春、内田百間、谷崎潤一郎、吉本隆明、雑誌『美術手帖』など。ここはどちらかというと男性店主が選んだように感じるがどうだろう。
Ryuko Tsushin (流行通信) 2005年 02月号食うものは食われる夜本についての詩集 (大人の本棚)百鬼園随筆 (新潮文庫)

右辺の面陳棚 目玉商品コーナー

レジまで来たので一旦戻って右辺の面陳棚を見る。見るというか眺める。面陳するだけあって見栄えの良い大判本がほとんどで写真集や古雑誌である。『skins & punks』やヘルムートニュートン、植田正治、『ガロ』、『一千一秒物語』など。
ここになぜ『一千一秒物語』があるのかが気になったが一番冊数が多い奥の棚を見ていないのて先を急ぐ。
一千一秒物語

奥の本棚

奥の本棚は5本あるけど下半分が飛び出ており飛び出た部分を机代わりにできるので立ち読みしやすくなっている。中央の本棚も胸あたりまでの高さなので本が平に置かれていたり、中身を確認するのにもちょうど良い。大判本が多い故の気遣いだろう。非常に助かる。

右側から見ていこう。
まず右の2本はデザイン・アート系である。男性店主の好みを反映してかブックデザイン関係の本も多かった。『あしたのデザイン』、『愛書六十五年』、『ブックデザイン』、『文字の力』、『田中一光の本』、『花椿ト中條』、『精緻の構造』、『デザイン巡礼』、横尾忠則の本、『ロシア・アヴァンギャルド』など。
次の1本は写真集である。アラーキーや森山大道、篠山紀信、細江英公、東松照明、植田正治など海外写真家もあるが日本人がほとんどだ。
次の1本は映画、音楽、アートである。ピンクフロイドや山下洋輔の本、植草甚一の本、横尾忠則の本などでこちらも日本人が多いように感じた。
最後の1本が幻想文学だ。『澁澤龍彦集成』や中井英夫、寺山修司、久生十蘭、唐十郎などである。幻想文学を少しだけかじった身からするとこの品揃えは好きなのだが、なんだろうかこの違和感は。デザイン関係の本が多い中でのいきなりの幻想文学である。そういえば右辺の面陳棚にも『一千一秒物語』があったが。

女性店主に聞いてみるとここは彼女の選書らしい。幻想文学が好きなのでどうしてもそうしたかったようなのだ。二人で選書するが故の違和感である。過度に専門化せずにミックス感があるのは商店街という立地を考えれば効果的であるように思える。敷居を下げているのだ。この意外性。面白い。
田中一光とデザインの前後左右日本の写真家〈30〉東松照明ぼくは散歩と雑学がすき (ちくま文庫)十蘭ビブリオマーヌ (河出文庫)一千一秒物語

外の100円均一コーナー

最後にこういうのは気が引けるのだがオススメの100円均一コーナーを紹介しよう。
外にあるのだが品揃えが素晴らしい。ぼくの好みド直球である。『さらば、雑司が谷』や『中身化する社会』、『悪人』など読みたかったが読み忘れていた比較的新しめの本がゴロゴロあるのだ。もちろん中も面白いがここのまめだけでも寄る価値はあるだろう。
さらば雑司ヶ谷中身化する社会 (星海社新書)悪人

オシャレだけど商店街の雰囲気にマッチしたハイブリッド書店

nostos booksに行って感じたことは「小商い」の考え方である。少し前になるが「小商いのすすめ」や最近では雑誌『spectator』が取り上げた「小商い」。
スペクテイター〈27号〉 小商い小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ
規模を追い求めず地に足のついた、でも、新しいやり方で生きていくための仕事。リトルトーキョーやグリーンズなど新しい働き方でキーワードになる考え方である。
実は行く前まではデザイナーが開いた古本屋だというから良くも悪くも尖った雰囲気と品揃えのお店だろうと思っていたのだが、全くそんなことはなかった。確かにオシャレだが柔らかい雰囲気で良く商店街ともマッチしていたのだ、その証拠にゲリラ豪雨の後だと言うのにたくさんの人がお店に来ている。取材中にご近所のおじさんが店主と話していたくらいである。
「出会い系本屋」を標榜するスノーショベリングのようにここには出会いがある。若者が来たくなるような魅力と地元の人にも愛されるだろう気取らない雰囲気。もしかして「これからの街の本屋さん」のヒントはここにあるのではないだろうか。

nostos booksの今後に期待したい。

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