本屋探訪記vol.61:池袋にある古本屋「八勝堂」は神保町を思い起こさせるクラシックな古書店である

八勝堂店頭

昔の池袋には古書店がたくさんあったらしい。立教大学が近いせいなのだろうが、その面影は今はない。西口に2軒と東口に1軒あるだけだ(もしほかにも知っていましたら教えて下さい)。
そのうちの一軒を訪れた。本屋探訪記第61弾は池袋西口の古本屋「八勝堂」だ(2013.1.20の記録)。

まとめ

時間のない方のためにまとめです。
  • 品揃え:文芸、社会系が多め。そのほか1階にはカセットテープやVHSビデオ、レーザーディスク、レコード。2階にはいわゆる古書がある。
  • 雰囲気:これぞ古書店って感じの趣き。建物もしっかりしている。
  • 立地:池袋駅地下通路より、エチカ池袋突き当たり『C-2出口』を出て左20m。池袋駅西口からは結構歩く。
東京都豊島区 西池袋5丁目2−10
TEL: 03-3981-1870
FAX: 03-3981-3084
Email: hasshodo@tokyo.email.ne.jp
URL: http://hasshodo.koshoten.net
営業時間 10:00-19:00
定休日 日曜・祝祭日

池袋西口から要町方面に行く

池袋西口を出る。立教大学側に向かっていくとマルイが左手に見えるだろう。このマルイを通り越して要町方面に真っ直ぐ行くと左手見えてくるのが『八勝堂』だ。

大通りの路面店

大通りの路面店である。神保町でもあまいしこんなら好立地に古本屋があるというのも不思議だ。昔は古本屋街があった証拠なのだろうか。そこら辺のことを知れる本があればぜひとも読みたいものだ。

店舗前のセール

さて、この大通りに面した店舗の前には何台もセール用のワゴンがある。面白いのが本だけでなくレコードが多いことだが、ということは客層はシニア層だろう。路面店とはいえ池袋西口のハズレである。若者は来まい。

ワゴンにあるのは、正面左から100円均一文庫本、100円均一シングルレコード、大判本、特価本の単行本、200円均一CD、同じくビデオ。300円均一クラシックレコード、洋楽レコード、邦楽レコード、輸入レコードといった並びで、品揃えはといえば以下の通り。
昭和モダンアート (1)茶の心 (淡交ムック)少年H (上巻)銀花 2009年 09月号 [雑誌]悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)
文庫100円均一:『悲しき熱帯』、『ハンニバル』、『中くらいの妻』、『化身』、『銀座のブラック=アングル』、『世相あぶりだし』、『カムイ伝』など
シングルレコード:知らないものばかり。
大判本:『昭和モダンアート』1〜3、季刊『銀花』、『茶の心』、『別冊太陽』、平山郁夫画集、あとは図録。
単行本(特価本):『静寂の叫び』、『朝の歓び』、『死の島』、『少年H』など。
CD:シャイニーウィンディディ、林アキオ、犬夜叉、天上天下など。
レコード類:これも全く不明。
入口すぐ左横には全集がセットになって積まれている。

無音の店内

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中に入ると久しくなかったノーBGMである。つまり無音である。店員さんの作業音が響き渡る店内は奥に広い長方形で、中央に奥まで続く一列の棚6本とあとは天井まで一面の壁棚である。ハシゴが取り付けてあり手の届かない高い位置にある本を取れるようになっている。ここは「ビレバンかっ!」とツッコミたくなってしまったあなたは心配しなくてよい。価値基準が若い証拠である。レジカウンターは入ってすぐ左だ。


200円均一ワゴンと左辺の壁棚

それでは本を見ていこう。
まず、入ってすぐ目の前に文庫本の200円均一セールワゴンがある。『天と地と』や池波正太郎、澤田ふじ子。吉村照、津本陽など時代小説が好きにはたまらない品揃えンおセールである。

このまま真ん中の本棚で区切られた左側の通路を見ていく。
壁棚ではざっくりとしたジャンル分けがなされており、手前が文学、次に少しだけ国文学・日本史で、奥が映画、落語、絵など芸能となっている。
上方放送お笑い史日本の映画人―日本映画の創始者たち和算の事典金閣寺 (新潮文庫)伊豆の踊子 (新潮文庫)幻影城の時代 完全版 (講談社BOX)
書名や著者名を挙げていくと、文学は『幻影城』など江戸川乱歩、梶井基次郎、開高健、川端康成、漱石、田山花袋、三島由紀夫、森鴎外、吉川英治など。
国文学・文学史には、本の本と古代文学もある。『イギリスの貸本文化』や『書誌学者の犯罪』、『出版の王座』、『万葉集』、『趣味の仏像』、『日本の女性名』、『和算の事典』、『江戸の名奉行』』など。
芸能では、『上方放送お笑い史』、『私の映画日記』、『日本の映画人』、雑誌『版画藝術』などの単行本から、『知られざるモディリアーニ』や『平松礼二画集』、『もうひとりの熊谷守一』など画集を中心に大判本まである。
基本的に古典籍とは言えないがしっかりとした古本が置いてあるイメージだ。

真ん中本棚の左側

振り返って真ん中の本棚を見よう。
ここは手前2本の本棚が文庫・新書で、その奥が単行本だが日本文学、海外文学と続いている。
文庫・新書棚には、岩波文庫に始まり、講談社学術文庫、講談社文芸文庫、ちくま文庫、ちくま学芸文庫、平凡社ライブラリー、少年倶楽部文庫といったちょっと珍しいシリーズまである。著者名を挙げると、山田風太郎、都筑道夫、澁澤龍彦、江戸川乱歩、鮎川哲也、開高健、日本推理作家協会編、日本探偵小説全集といった具合だ。海外文学は少な日本の作家ばかりである。新書は少なめで一段ほどしかなかった。

そのまま奥に進み、単行本の棚を見ることにする。
長谷川時雨作品集ぼくの読書法 (植草甚一スクラップ・ブック)コーヒー一杯のジャズ (植草甚一スクラップ・ブック)
手前の日本文学を中心にした棚には『稲垣足穂作品集』や『植草甚一スクラップブック』、開高健、小沼丹、倉橋由美子、幸田文、澁澤龍彦、『定本 久生十蘭全集』、『長谷川時雨 作品集』、永井龍男、寺山修司、三島由紀夫、日本の名随筆、『のらくろ小隊長』、金井美恵子、中上健次、小林秀雄、吉本隆明などなど明治から昭和まで充実の品揃え。
論議 (ボルヘス・コレクション)利休大事典ジョイス『ユリシーズ』全4巻セット (集英社文庫)現代フランス文学13人集〈第3〉 (1965年)ジョン・パーキンズ 狂った記憶 わが友ピエロ 勝負の終り世界文学のフロンティア〈1〉旅のはざま
海外文学の棚には、河出の世界文学全集に『世界文学のフロンティア』、クンデラの『不滅』や『架空地名大事典』、『私のジャンコクトー』、現代フランス文学13人集、ロランバルト、ボルヘスコレクション、『英国文学史』、『サキ選集』、『ユリシーズ』、ジョンアーヴィングの『また会う日まで』、『重力の虹』、『光芒の1920年代』、魔女たちの世紀シリーズなどこちらも充実している。
さらに、一番下段はすべて大判本で『俳句 大観』、『利休大辞典』、『草野心平詩全景』、『荷風書誌』、別冊太陽の発禁本特集、『大衆文化事典』、『宝塚歌劇の70年』、大辞林など古本屋らしい品揃えだ。

店舗の右側は音楽コーナー 右辺の壁棚

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戻って真ん中の本棚で区切られた右側の通路はといえばこれが全てCDとレコードである。新しいのももちろんあるのだろうが基本は古いものだ。壁棚には手前に歌謡曲と演歌(新品あり)に妙齢の親を狙っているのだろうアニソンも置かれているのだが、なぜかレコードだ。これはつまり古本屋の矜持なのだろう。ほほえましい気分になった。
奥にはジャズCDとレコードで、ほかにも歌劇・声楽や器楽・室内楽、ピアノ曲などがある。突き当たりはレーザーディスク(!?)とレコードのセットものがあり、「五木ひろし大全集」や「コブラパーフェクトコレクション」などがある。たかだか何十年といわれればそれまでだが20代の若造からすれば十分歴史を感じる事ができる品揃えだ。


真ん中本棚の右側

振り返って真ん中本棚のこちら側にはもちろんCDとレコードである。古本屋でこれだけかっちり分かれているのも面白い。手前から新入荷コーナー→クラシック400円均一コーナー→洋楽ロック・ポップス→民族音楽→ブルース・シャンソン→インストゥルメンタル・ムード→その他邦楽・効果音→落語→アニメ→サントラ→オムニバスといった流れである。壁棚と比べるといくらか新しいのはレコードよりもCDが多いからだろう。
しかし、これだけCD・レコードが多いのに音楽本がないことには驚く。それともまだ見つけていないだけだろうか。

レジカウンター前のレコードの山

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レジカウンター前はレコードのシングル盤とCDシングルコーナーになっているのだが、驚くのが足元に裸のレコードが積み上げられていることだ。古雑誌や題材が昔の映画・ドラマでは見たことあるが実際に見るのは初めての光景にどきりとする。さらに、カセットもありこの店だけ時間が止まっているかのような錯覚に陥る。
入口のすぐ右横には隠れるように小さい本棚がありここにようやく音楽本だ。『小沢征爾大研究』、『ヤーノシュ・シュタルケル自伝』、『回想するジョン・レノン』、『これがジャズ史だ』、『ジャズ詩大全』、『グレングールドアットワーク』、『美空ひばり』、雑誌『ミュージックライフ』、『エヴァンスを聴け!』、『ブリティッシュロックの黄金時代』などなど量は多くないが良い品ぞろえだ。


ヘビークラシック古書店な2階

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『植草甚一スクラップブック』を購入しホクホクの気分で店を出ようとしたのだが、レジカウンターの横に通路がある。従業員通路かと思っていたのだがまさかと思い聞いてみると「二階もありますよ」。
なんということだ。一階の時点で十分なクオリティであるというのにまだあったとは! 恐るべし八勝堂である。出版不況の世の中で開店しているだけのことはあるのだ。しかも、これが行ってみると完全なる古書店なのである。いや完全なる古書店というと語弊が生じるかもしれないが、こう頭の中に思い描くよう『ザ・古書店』とでもいうようなイメージを持って頂ければよろしい。箱本や1万円以上する古書が置かれているそんな古書店を東京では神保町以外で初めて見た。まだまだ本屋・古本屋の世界は奥が深いのだ。

レイアウトは1階と同じで真ん中にある1列の本棚がスペースを手前と奥、左側と右側に分けている形になっている。
書名についてはいつもは目についたものを挙げているのだが、この2階に関しては古書素人のぼくには分からないものばかりで、あえて挙げるとすればアラビアンナイトの揃えがや東洋文庫が多数、吉川弘文館の本多数そのほか『〜の研究』という本などである。これだけ聞けばなんとなく雰囲気が分かって頂けるだろうか。
そんなわけだから、以下からは紙で作られた見出し(ジャンル)のみ挙げることにする。書名が知りたい方はぜひ行ってみて欲しい。驚くから。

ヘビークラシック2階の壁棚

まずは壁棚であるが、左辺からぐるりと回っていくと、史料・古文書、日本史(上代)、日本史(中世)、日本史(近世)、交通史・経済史、キリシタン他、対外関係史、東洋史、朝鮮史、東洋思想、中国史ときて奥の突当りにぶつかる。奥には高価な古書がずらり。何千円、何万円もするコーナーだ。『コロンブスの地図と大発見』7千円や『日本城郭図集成』2万円、『版画 新日本百景』1万5千円など購入しようとは思わないがぜひとも手に取ってみたいものばかりである。
そこから、右辺に回ると書誌学、国文学(近世)、国文学(中世)、和歌・連歌他、国語学となる。大学教授が使いそうな本棚だ。

ヘビークラシック2階の真ん中の本棚

壁棚が見終わったので真ん中の本棚を見ることにする。手前側は芸能・趣味、民俗、北方・南方関係、モンパルナス関連書籍、伝記・教育、科学・医学。奥側は神道・仏教、郷土史、考古学。

八勝堂は池袋に残る最後のザ・古書店だ

全てを見終えた。まるで高級フルコースを食べつくしたかのような気分だ。おなかいっぱいである。最後、2階の紹介で驚かれたかもしれないがこの店は1階の品揃えも良い。特に文学に関しては幅広く扱っているように見える。
某ジュン〇堂書店では飽き足らない本の広くて深い世界を堪能したい方はぜひとも寄って欲しい。特にお近くの方。神保町に行かなくてもあるところにはあるのだ。一度言っておいて損はない店なのは間違いない。少なくともぼくは何度か行ってみたいと思う古本屋さんであった。

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