今回の本屋探訪記は、大阪心斎橋の「スタンダードブックストア心斎橋」(以下は2013年5月17日時点での記録です)。広いこともあるが何より大好きな本屋さんなので、当初想定していたよりも大幅に長くなってしまった。その分、「スタンダードブックストア心斎橋」について詳しく知ることができると思う。ご一読いただいた後はぜひとも行ってみてほしい。最高であることは僕が保証しよう。
まとめ
まず、時間の無い方のために手短にまとめたものを書いておく。
- 品ぞろえ:ベストセラーは少ないがツボは押さえている品ぞろえ。伊坂幸太郎や海堂尊は少ないが筒井康孝やヴォネガットはあるみたいな。1階にはクリエイティブ系、地階には文芸と雑貨。
- 雰囲気:アメリカンが流れており、気さくにお洒落を楽しめる感じ。本と雑貨の混沌具合から上品なヴィレヴァンのような雰囲気。ターゲットは20代~30代だろう。
- 立地:少し不便。なんばから行けば良いのだけど、それでも徒歩10分弱はかかるはず。ただ、駐輪の数も多かったし、ミナミの本好きやなんかお洒落な気分を味わいたい人には嬉しいのかも。
Tel.06-6484-2239
STORE HOURS Everyday11:00am-10:30pm
URL:http://www.standardbookstore.com/
Twitterアカウント:https://twitter.com/standardbook
Facebookページ:https://www.facebook.com/standardbookstore
読書会で知った大阪のオススメの本屋さん
読書会で「オススメの本屋はどこ?」という話をしたときに、「丸善・ジュンク堂」と同じくらいの頻度で出てくるのがこの書店「スタンダードブックストア心斎橋」。そんなに良いのだろうか? 気になったので行ってみることにした。
場所はアメ村の外れで道頓堀の近くなんだけど迷ってしまった。僕は心斎橋で降りたけど心斎橋よりはなんばの方が近いかも。御堂筋線心斎橋駅で降り御堂筋を南下していく。すると道頓堀が見えてくるので、その辺りを右折すると自転車がやけに駐輪されているビルが見つかる。
よく見ると「本屋ですが、ベストセラーは置いてません」という文字がエンジ色の地に白い字で書かれてある看板が見つかる。そう、ここが「スタンダードブックストア」だ。中に入ってみよう。
待ち合わせに最適な本屋さん
すると想像していた以上に中は広い。地下にはカフェもあるようだ。
申し訳ないが広い分、いつもよりさらに不正確になるが広さは一階につき大体40畳くらいだろう。奥に広く突き当りまで行くと直角に右に曲がっている作りとなっている。
雰囲気は大型書店のように蛍光灯ではないが本が読めるくらいの適度な明るさでカーペット敷き。アメリカンが流れており焦げ茶の木製の什器をよく使っているように思える。それらが合わさって総体としてお洒落でどこか上品な感じになっている。女性との待ち合わせに使うと喜んでくれそうな雰囲気だ。
ヴィレヴァン?丸善?いやいやすスタンダードブックストアだ!
本棚の中にカクテルシェーカー!!
広いので大まかに書いていく。まず全体の特徴としてTシャツや時計、バッグ、コーヒーメーカーやマグカップなどカフェ系アイテム、食器、文房具、シェーカーなど酒に関わる道具などなどの雑貨が境目なく自然に融合された形で置かれていることが挙げられる。
雑貨と本を同時に扱う店は多いが本棚の中にシェーカーが置かれている(これは地階)ような店はまだ見たことがない!
さて、具体的に見ていこう。入ってすぐはご他聞に漏れず雑誌コーナーだ。背の高さくらいの棚が2つ1セットで3列あり入り口に向かって棚の横にある平積み台と面陳台には最新刊が並べられている。
上品なヴィレヴァン?
左通路には男性誌とそれに関連する書籍(文房具についての本や「男の作法」、革靴の本など)や雑貨(時計や名刺入れなど)。真ん中の通路には、写真集やデザイン性が高い雑誌が。右側の通路には女性誌とファッションに関連するさまざまな本が置かれていた。
雑誌コーナーを抜けると左横に地下へのエスカレーターがありその前には自転車と自転車関連の雑貨が。通路を挟んで奥側にはアウトドア系のバッグや服、ランプ、靴のお手入れグッズ(KIWI)などが置かれている。
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ここから先は突き当りまで棚の置き方が不規則になっており全体として雑誌コーナーと同じく3列になっている。ちょくちょく平積み台があったり列の線上ではない場所に棚が置かれていたりして一見雑然としているようだがなぜか見やすいレイアウトとなっている。
ヴィレッジヴァンガード(以下、ヴィレヴァン)を参考にしたにしては見やすいし雰囲気もヴィレヴァンより上品だ。どうやって考えたのかは分からないがヴィレヴァンの良いところを残しつつも遊びすぎず上品な印象を保っているという点で、非常に素晴らしい!
さて、ここからは入り口から見て左回りに店内を回ることにする。
一番ヴィレヴァン的品揃えのコミックコーナー
雑誌コーナーを抜けて左側の通路はコミックコーナーだ。流れとしては青年漫画→大人の女性向けコミック(レディコミではない!)となっておりPOPは多くはなく主張し過ぎない程度にある。途中でヘッドホンやイヤホン、CDケースなど音楽関連グッズが置いてあるが、これはコミックを購入する層が比較的若く音楽にも興味があるということを考えた上での配置だろう。
具体的な品揃えとしてはザ・ワールド・イズ・マインやSOIL、楳図かずお、レベルE、ワイド版 風の谷のナウシカ7巻セット「トルメキア戦役バージョン」、進撃の巨人などが並べられており(女性向けコミックは知らないので割愛)上述した音楽関連グッズも含めるとスタンダードブックストアの中では一番ヴィレヴァン的なコーナーだと感じた。
ただ、それも売れ筋ではない本を置こうとした場合、どうしてもサブカル的な色が濃くなってしまい京都のガケ書房のように自費出版を扱わないとなると仕方ないのだろう(そんなこと言いながらもかなり好みな品揃えだし)。
コミックコーナーで僕が嬉しかったのは鈴木志保さんの「船を建てる」があったことだ。この本は一貫した物語が特にあるわけではなく一話完結のパラレルストーリーのような構成になっている。登場人物は全て話す動物。「煙草」と「コーヒー」という主人公とその周囲の動物たちが織り成す物語だ。優しさとか悲しさとかそういった感情をふんわりと物悲しく伝えてくれる良質な本で僕は現実を忘れたい時、感傷的になっている時に読むようにしている。
晩秋や初春など感情が敏感になっている時に読むと自分の気持ちを代弁してくれているようで非常に心地よいのだ。
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刺激的なフェア
さて、コミックコーナーを抜けるとその棚の横ではフェアをやっている。「90年代ふたたび。」だそうだ。
内容はというとブックフォーエバや岡崎京子、宮台真司、さくらももこ、吉田戦車など懐かしいが今でも現役で有名な方々の作品が並んでいる。こういう括りにすると新たな視点を得ることが出来て刺激的なフェアだった。
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カウンター前は雑貨がメイン
そのまま奥に行くと、雑貨がメインのコーナーになる。
カメラや写真立てなどの商品と同じ場所に写真関連の本や雑誌が置かれていたり。そのほかネックレス、ピンバッジ、文房具などの雑貨が置かれている。ここを抜けるとカウンターだ。ナチュラルなファッションのお姉さんが作業をしていた。
カウンター前の空間には2つの棚がありカウンターから見て(今まで(入り口から見た場合)と左右が逆転します)、右が上述した雑貨の棚。もう一つの左の棚には内側の通路には雑貨、外側では岡本太郎関連の本やグッズばかり(太陽の塔Tシャツがあった)が並べられていた。
カウンターの右横には空間があるのだが、まずはここから入り口に向かって真ん中の通路を進むことにする。
前衛ボップ小説フェア
通路を進もうとすると、その横、カウンターから見て左の棚の前に面陳と平積みがされており視線を上げると「前衛ボップ小説フェア」と書かれた紙がある(カウンター前には棚が2列ある)。
品揃えはディックやヴォネガット、トマスピンチョン、稲垣足穂や高橋源一郎、筒井康隆、安部公房などだ。さすが前衛というだけあって尖がったセレクトである。SFが多いように感じたがそこに安部公房や稲垣足穂が入っているのが素晴らしい。
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ビジネス書と女性誌のコーナー
さて、真ん中の通路を進もう。真ん中の通路には小説が多く文庫やハードカバーなど本の種類に関係なく置かれており、抜けるとまたランダムな棚になる。
そこで、カウンターから見て左側の通路を見るとそこには劇団系、IT系、ソーシャルなんとかとか孫正義とか仕事術、ブルータスなど成人男性向けの本や雑誌が置かれいったん通路を挟んで(ここで真ん中の通路の棚はランダムになる)ビジネス系や映画、監督、女優など映像作品系の品揃えとなる。
大体、ここら辺で雑誌コーナーを抜けたあたりだ。バッグや服、食器や椅子などが置かれている場所でもある。このまま真っ直ぐ行くと雑誌コーナーの中の入り口から見て右側の女性誌コーナーに出ることになる。
地階もあるけど1階はまだまだあります
雑誌コーナーに戻ってきたので、さあこのまま帰ろうかとうっかり考えていたら、何かが頭の隅にある。「何だろう…」と隣のコンビニでペットボトルを買いながら考えていたら、思い出した。
「そうだ、まだ行っていないところがある!」
カウンター前に戻りカウンター右横の空間を見ることにした。カウンター右横の空間はそれだけで10畳くらいはあるのだが手前に洋書のバーゲンコーナーがあり、その横にTシャツがあり、棚は胸くらいまでの高さのものが3列。奥まで続いている(洋書のバーゲンセールはデザインやアートが好きな客層には良いアプローチだろう)。
左から3つ目までの通路は「アート」がテーマだろうか。写真集やアニメ系(北斎漫画など)、浮世絵、詩(寺山修司)、現代美術(奈良美智など)、美術(マグリットの画集など)などの本や雑誌が並べられ、真ん中の通路奥にはなぜかアメリカンな人形がガラスケースの中に飾られている。
右側の通路は「思想や現代社会」がメインでレヴィ・ストロース(悲しき熱帯など)やニーチェ、デカルト、禅、東浩紀(思想地図βなど)、中沢新一などなどが置かれていた。
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カウンター右横の空間は丸善に近いような上品な雰囲気
カウンター右横の空間は入り口近くよりもっと上品な雰囲気と品揃えでより客層を絞った構成だと感じた。「手前の雑誌や雑貨で招き入れて、奥に入ると深い世界が待っている」って感じだろうか。それとも今まではヴィレヴァン寄りだったのが奥に行くと丸善寄りになったような…うまい喩えが思いつかないがより上品な雰囲気になったと感じた。
さて、これで1階を全て回ったことになるのだが、実はまだ地階が残っていたりする。
地階 地下に広がるワンダーランド
一階の雑誌コーナーが終わりコミックコーナーに至る前の通路を左に行くと自転車と自転車関連グッズがある。と、すぐ目の前に降りエスカレーターがあるではないか。 「一階の時点で充実だったのにまだあるのか」とか「そういえば小説はあまりなかったな」とか。そういったことを考えながら地下に降りていくと木製の棚がエスカレーターホールの壁に2つ並べられてありそこにあるのはコーヒーメーカーやマグカップなどカフェ系のグッズ。
カフェの導線?
地階にカフェがあるとは聞いていたがそれの導線だろうか。だが、近くにカフェの入り口らしきものはない。「何だろう」と思って左手に進むと食や料理、酒のコーナーがあることに気づく。これはつまり地階のカフェと食・料理、酒コーナーのための導線ということだろうか。一人で納得して先へ進むことにする。
と、その前に地階の大まかなレイアウトを紹介しよう。
広いスペース 低い本棚 開放感
地階はエスカレーターホールの右手に販売スペースがある。右に広い長方形の形をしており販売スペースは奥に進むほど雑貨や文房具が多くなりカウンター、カフェと続いている。棚の配置についてはもちろん壁のすべてに本棚。他はランダムに並べられており説明するのが難しいので紹介の中で軽く触れる程度にする。
棚の特徴として壁棚以外は胸くらいまでの高さが基本の比較的低い棚であり販売スペースの視認性が高くなるようになっている。実際のところは是非行って自分の目で確かめて欲しい。
さて、先ほどの「食や料理、酒のコーナー」はこの地下空間における一番手前にあたる。このコーナーは長方形の左下の角(エスカレーターホールを出た場所)を占めており壁棚にカレーなど料理系、世界の食や食材についての本、お酒、カクテルを作る時のメジャーカップとシェイカー(本に混ざって棚の上に置かれていた!)、蜂蜜などが置いてあり、壁前の棚や平積み台には弁当箱や箸、計り、計量スプーン、ポットなど料理で使いそうなものが本と共に並べられていた。
本棚の中にカクテルシェイカーが!!
ここで全て食器を揃えるのは当然無理だが既に一通り揃っている人やプレゼント目的ならばお洒落なカフェにあるような食器がたくさんあるし、お菓子や料理の教則本を読んで「作りたい!」と思った方のためには必要な道具もある程度揃っているのでレパートリーを増やしたい人にもオススメのコーナーだと思う。また、ここで僕が驚いたのが酒についての本が置かれている棚の中にシェイカーやメジャーカップが自然に置かれていたことだ。
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今まで行った書店では雑貨と本が一緒に売っているとは言っても雑貨売り場、本売り場というように明示されていなくとも何となくどこに本と雑貨で区切りが分かれていた。一番混ざっていた「ガケ書房」でも同じ棚の中にあったっとして上段に本、下段に雑貨という感じだった。
ところが、スタンダードブックストアでは本が通常通り並んでいる棚の中にシェイカーが。平積み台に本が置かれている中に一つだけメジャーカップやツバメノートが置かれているのだ。ここまで本と雑貨の区分けが無い店は今まで見たことがない! 小さいことだがそういう意味でスタンダードブックストアは新しい。自分の理想に近い店だと感じている。
旅、世界の食・酒、そして文学
壁棚を長方形の左斜め前の角に進んでいくと世界の料理や酒から旅行に関する本が多くなってくる。ツバメノート(「旅行中のメモ用に」ということか)、旅の本、海外についてのエッセイ(深夜特急もこの並びなのがニクい)、輸入雑貨(モロッコのランプシェードや靴など)、ホテル特集などだ。料理や食、酒を国内から海外に広げていってそのまま旅行関係に移っていくという流れはとても自然だ。
そして、そのまま壁に沿っていくと出版や書店、製本、印刷(本の歴史 (「知の再発見」双書)や、読書について、装丁問答 のサイン本)、文学論(早稲田文学 3号など)、詩(谷川俊太郎や穂村弘、中原中也)が棚二つ分あり、そこから先は、文学コーナーだ。
壁棚には日本文学がメインだ。壁の目の前の棚には、アジアやアフリカ、パリといったように国別地域別に分けて海外の文学やエッセイが置かれている。具体的には「南米」だとガルシアマルケスが多く、アジアだと魯迅、ヨーロッパ(イタリアやパリで分別があるが細かくは覚えていないです。ごめんなさい)だとウンベルト・エーコやチェーホフ、ゾラ、フランツ・カフカ、カズオイシグロ、ジョージ・オーウェルなど。
アメリカだとヴォネガット(20冊くらいあった。充実の品揃え)やトマス・ピンチョン、カポーティ、ヘミングウェイ(penの「ヘミングウェイ再び」特集も隣にある)などがあり、そこからビートニク文学が少し(ケルアックなど)。そして、黒人文学に入り文学ではないが黒人の歴史やジャズの本、ハーレムの本が置かれていたりする。また、アメリカ文学と言えば村上春樹と言うことで棚一つ分を使って村上春樹の著作が英語訳されたものも含めて置かれている。
また、このコーナーは棚の横に一つずつ棚を置いている。幻想文学が店舗中央側で壁側がビートニク文学だ。幻想文学では、澁澤龍彦や江戸川乱歩、中井秀夫、夢野久作、エロス系の本などがまとめられている。
児童書とSF
奥に進むといつの間にか児童書コーナーになっている。不思議の国のアリスやその関連本、モモなどがあり絵本や童話集も棚二つほどを使って置かれている。
児童書の棚の裏はSFコーナーだ。作家で言うと伊藤計画や円城塔、ブラッドベリ、(20冊ほどあった。ヴォネガットといい店員さんが好きなのかも)アーサー・C・クラーク、ジュール・ヴェルヌ、バラード(これも多かった)、フィリップ・K・ディック(これも多い)などが。著作で言うと夏への扉やニューロマンサー、時計じかけのオレンジなどだ。
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弁当箱、国内旅行、サバイバル
ここまで来るともう雑貨がメインになってくるのだが少し戻って出版や書店の棚の前に行く。ここはちょうど旅行関係の本の前にもあたるのだが整体やヨガなど健康・エクササイズ関係の本や山草など植物についての本、サバイバルに関する本があり、その奥カフェ系の本や弁当箱など食器類が並んでいる場所のさらに奥に日本国内のコーナーがある。
滋賀県や静岡県など地域ごとで棚が分けられ様々な旅行本が置いてある(もちろん大阪特集、京都特集もある)。先ほどの世界の料理→海外旅行の流れではないが弁当箱などの近くに国内旅行があるというのは面白いと思った(弁当箱は、兵庫県など近場の特集だったら「ピクニックに必要なもの」という括り方も出来る)。
そして、この国内旅行コーナーの近くエスカレーターホールを出て右手すぐの部分に建築関連の本が並んでいる。ル・コルビュジエや安藤忠雄などの本だ。近くの壁には目覚まし時計、照明など卓上用品がありインテリアとまではいかないが何となく共通している空気を作っている。
さて、これで本が販売されているスペースは終わり長方形の奥、残り3分の1の部分は文房具など雑貨が占めることになる。
雑貨と本 豊かな暮らし
国内旅行本のコーナーの周辺には、ガーデニング系、アクセサリー、手ぬぐい、木箱など女性向けの雑貨が並んでいる。特に、料理→国内旅行→ガーデニング、さらにはヨガなどエクササイズ系(そして、それに伴う雑貨)が並ぶ辺りの構成は「オーガニック」というか「豊かな暮らし」というか女性のハートを掴むのが目的だと感じられる。
一番奥まで進むと文房具やアート形の道具、書斎・リビング周りの商品が大半を占めることになる。
具体的にはブックカバーやポスター、ブックバンド、グラスペーパー、クリップボードなど文具、時計、トランプ、筆箱、ノート、スケッチブック、のり、ホチキス、テープ、手帳、ポーチ、ペン(一番多い)、万年筆、小物入れ、シール、グリーティングカード、切手、スタンプ、マスキングテープ、名刺入れ、財布、地球儀、置物、インク、ガラスペン、便箋、帽子、ストール、、iPhoneアクセサリーなどだ。
気合の入った文房具コーナー
この中で力を入れていると感じたのがやはり文房具である。特にペンや万年筆の種類は多くガラスケースには入れられている高価なものからお手頃なものまで幅広い品揃えだった。
僕が気に入ったのはブックカバーと小物入れ。ブックカバーはハンズや普通の書店では見たことのない種類のものがあり特に取っ手付きのブックカバーは始めてみたこともあったが「これはアイデア商品だ!」と感動した。
また、小物入れであるが僕は本型の小物入れをそのとき探しており、雑貨屋を回っても中々気に入るものがなく難儀していた。大体、雑貨屋で売っている小物入れといえば女性用のファンシーなデザインか地図など何となく権威的なデザインを施したものが多いのだが僕が求めていたのは書名が書いてあるような本当に本がそのまま小物入れになっているようなものが欲しかった。
それが「スタンダードブックストア」にはあったのである。もちろん即購入したことは言うまでもないだろう。
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その他、文具コーナーの端、長方形の右斜め間の角部分には本皮のバッグのみを扱ったコーナーがあり文房具とも合わさって上品な雰囲気をかもし出してくれていた。何より僕は皮の匂いが好きなので、このコーナーに辿り着いた時は思わず買ってしまいそうになってしまった(勿論、本皮なので高価のため踏みとどまったが…)。
購入前の本が読めるカフェ
これで、雑貨も含め販売スペースは終わり降りのエスカレターホールから見た長方形の一番右奥にカフェスペースがある。このカフェだが何と購入前の本も読むことが出来る。ルクアの三省堂書店や京都マルイのふたば書房でも同じ試みが行われており最近流行ってきたという感覚があるがやはりカフェでゆっくり読みながら購入の有無を考えるということが出来るのは非常に嬉しい。
素人考えだと「本を汚してしまったりもう読んでしまったからと言って買わないお客が多いのではないか」と心配してしまうのだがチェーン店でも行っていることを考えると意外とうまくいっているのだろう。
邪推すると「立ち読みするには重いが読んでみないと買うかどうか決心がつかないような高価な本(そういう本は一度読んだことは購買うかどうかには関係ない)がカフェでゆっくり読めるようにすることによって購入しやすくなり店舗での滞在時間も増え、総合的に売上が増える」といった仕掛けだと思うのだが実際売上はどうなっているのだろうか。気になるところである。
さて、これでスタンダードブックストア心斎橋店の地階は全て回ったことになる。
自分のスタンダードを崩さない店
一階地階と回ってきて分かったこの店の特徴は雑貨と本、そして本の中で、ジャンルが大型書店に比べかなり緩く自由な発想で店作りが行われている点だ。また並べ方として面陳が多い。
店舗の魅力を商品のセレクトで最大限引き出し棚の置き方、ジャンルの分け方などにも工夫を凝らす。さらに、面陳で在庫を減らしながらも一つ一つの商品の訴求力を高めカフェで読めることによって滞在時間と購入への欲求を高める。行き始めたのはここ一ヶ月ほどだがいつ行っても常に駐輪スペースは満員だし読書会でも好きな書店に良く取り上げられる。
品揃えはベストセラーではなく割りとマニアックなものも多いのに人気を保っている理由は「上述したような特徴を崩さないでいるからなのかもなあ」と素人ながらも感心した素晴らしい書店だった。