こんにちはー。
台湾旅行のあと、にわかに台湾づいているぼくです!
11/9(月)の14時-18時というサラリーマン泣かせのスケジュール(独立して良かった)で行われた「台湾ブックデザイン最前線」についてこれから前篇後篇の2回に渡って報告します!
このイベントは、台湾の代表的ブックデザイナーを5名を紹介した書籍『T5』の出版(直前)記念のイベントで、日台デザイナーの交流も目的のひとつであるもの(以下、書きにくいのでである調にします)。
(以下、引用で示した部分は登壇者の話した内容をぼくが要約したものです。聞き間違いや解釈の違いがあるかもしれませんが、そこはご容赦下さい。)
そんな「台湾ブックデザイン最前線」ですが内容は3部構成。
1部2部は台湾からお越しの聶永真(アーロン・ニエ)さん、何佳興(ホー・ジァシン)さんの講演。3部は両氏と色部義昭さん、松下計さんとのシンポジウム(モデレーターは藤崎圭一郎氏)というもの。
- 聶永真(アーロン・ニエ)さんのFlikr
- 何佳興(ホー・ジァシン)さんのやっているレーベル Timonium lake としてのブログ
- 何佳興(ホー・ジァシン)さんの紹介記事
- 色部義昭さんの個人事務所「色部デザイン研究室」サイト
- 松下計さんのwikipedia
- 藤崎圭一郎さんのwikipedia
本の内容に縛られすぎず、本と読者のあらたな出会いをつくる
まず、アーロン・ニエさん。
最後の30分くらいしか聞けなかったのが悔しかったが、印象的だったのは「感性」という言葉だった。
ぼくはデザインというと、ロジックを積み上げていくことで完成するものだというイメージを持っていた。クライアントの要望をいかにビジュアルに落とし込むか。何か文字を配置するにしても「なぜ配置するのか」を明確に答えられるようなものがデザインなのかと思っていた。
ところが、アーロンさんは「自分のブックデザインがなぜそうなったのか説明できない」と言う。
デザイナーという職業はクライアントがいないと成り立たないものだが、では、そのクライアントに出来上がったものをアーロンさんはどう説明するのか。
これは第3部でも論点になるが、端的にいうと関係者と密なコミュニケーションを取ることで共通の認識を持っているから非言語的な感覚が通じるということだと理解した。
アーロンさんの言でおもしろかったのはブックデザインをするにあたって著者とあまりコミュニケーションをとらないと言っていたことだ。
曰く、
著者はテキストに対して固有のイメージを持っているが、デザイナーはそこから離れて読者と作品との間に立ち客観的に作品を再解釈したいから
とのこと。
例えば、アーロンさんは翻訳書を手掛けることも多いそうだが、原書とはまったく違うデザインになる。理由は現地のデザイナーが現地の市場感覚にもっとも落とし込めると思うからだ。
つまり、原書が売られていた国と台湾の市場の違う状況では、原書のデザインとは関係なく台湾市場に最も適したデザインにしなければいけないと感じるからなのだろう。
「本の内容に縛られすぎず、本と読者のあらたな出会いをつくる」
という言葉がアーロンさんのブックデザインのキモのような気がした。
会場が東京芸術大学なので、講演の最後に学生たちへのメッセージ。
あなたが作ったものがあなたの顔あなた自身であるそれ自体があなたの好みに適っていないとダメだ
もっともだ。言うは易し行うは難し、だが。
デザインは、社会と自分の間に立つ媒介的なもの
次の講演は、何佳興(ホー・ジァシン)さん。
書道と篆刻が原点だというホーさん。学生時代は書道と篆刻を学び、これで食っていきたいと考えたようだが、それだけではなかなか生活できない。デザインは生活のためにをやっていると考えていた時期もあったようだ。だが、いまは違う。
デザインは、社会と自分との間に立つ媒介的なもの
デザインを通すからこそ社会にメッセージを伝えることができる、ということだろう。
書道や篆刻が台湾でどれほどの市場があるか分からないが、ホーさんが仰るように食べていくのは難しいのだろう。
ところが、この書道や篆刻を原点にしてデザインという方法を使えば社会に参加することができるということだ
興味深かったのが、アーロンさんと違い、ホーさんはブックデザインをする上で、著者とのコミュ二ケーションが大事だと言っていたこと。当然だけれどもひとによってやり方は違うわけだ。
「真のコミュニケーションは課題共有」「デザインはコミュニケーション」「言語化できないところを視覚化できるか」
ホーさんのこの言葉を踏まえると、アーロンさんがよりアーティスティックな感性だとして、ホーさんのほうがビジネスというか広告というかそういった方面の考え方に近いということなのかもしれない。
(あくまで、個々の部分だけを切り取ると、だが。)
現在の課題は、台湾オペラとなど台湾独自の文化、台湾らしさをどう現代のシーンに置き換えればいいのか。そして、置き換えたデザインをひとが観たときにどう感じるのか。ということ。
第二部も終わって、いよいよ4名で話すシンポジウムの時間になった。日本のデザイナーと台湾のデザイナー何が同じで何が違うのだろうか?
(次回に続く)