【イベント】忘れられない夏 〜Cannes Lions 2013(カンヌライオンズ2013)のまとめ本をつくったよ!〜

イベントページ表紙写真

6/5(木)に2014年度カンヌのプレ勉強会を河尻さんが10 over 9 reading clubで開くということで、宣伝も兼ねて去年ぼくが企画したカンヌまとめ本についてまとめておこうと思う。

『CREATIVE CONTEXT -世界のCreative Contextを知る手がかり-』

編集過程をオープンにし、一部参加者にも編集参加して頂いたこの本。8/31には代官山蔦屋書店で出版セミナーもし、10月に発行した。お陰様で成功となったのであるが本記事ではこの出版企画の経緯と狙いを書いていこうと思う。 2ヶ月間にも及ぶイベントだったので多少長文となってしまうがご了承願いたい。

代官山蔦屋書店 修正

河尻さんとイベント

ふとしたキッカケで知り合った元広告批評編集長の河尻享一氏。本当にぼくなどと付き合ってくださるのが嬉しい限りのすごい人なのだがそういったことはとりあえず置くことにして、そんな河尻さん(敬意を込めてそう呼ばせて頂いている)とイベントをしようという話を2013年の春先からしていた。もう細かいことまでは覚えていないのだが、とにかくなにか面白いことをしようとかそんな感じだ。

過程をオープンにすること

ぼくはBOOKSHOP LOVERとして何か本屋が絡むイベントがしたかったし、河尻さんは今までにない新しいことをしたかった。
河尻さんと出会った「働くキュレーターLAB」ではこれからの編集のやり方として「過程をオープンにすること」がひとつのキーであるというようなことを話していたのだが、だったらぼくは本屋さんで読者が「本づくり」に参加できるイベントにできればいいと思った。しかもできればイベント中に入稿なんてできたら最高だ(結局入稿はかなわなかったが)。
実は初期の段階から声をかけた他の方にも同じようなことを提案されていて、結局、その方とは色々と考えて一緒にやることはなくなり、だったら自分たちでやってしまおうということになったのだ(ここらへんのぼくの考えは最後に書く)。 それが2013年の7月頃だったろうか。 じゃあコンテンツはどうしよう。すると、河尻さんが毎年取材に行っているCannes Lions 2013のまとめが良いと言った。いつもはウェブにまとめを上げているが「紙にして欲しい」という声も聞くし、ちょうど取材から帰ってきたばかりだし、と。

メンバー集め

これでコンテンツは決まった。あとはメンバーである。編集は河尻さん。プロデュースはぼくだ。足りないのは印刷とAD。印刷については前述した方の関係で知り合った金羊社クリエイティブワークスさんに。ADは河尻さんのツテでカンヌで2度も金賞を獲っている重冨健一郎氏になった。さらに、イベント会場のコーディネイターとして代官山蔦屋書店店員の高橋直貴氏を。出版セミナー開催時のライブまとめ人+本書イラストレイターとしてグラフィックレコーダー・清水淳子氏を迎えた。出版業界とはなんの関係もない一介のサラリーマンとしてはありえない豪華メンバーである。 メンバーも揃った。あとはやるだけである。

Cannes Lions 2013とは?

これからこの企画の紹介に入りたいがその前にCannes Lions 2013(以下、カンヌライオンズ)の説明が必要だろう。そもそもこのイベントを本サイトの読者でご存知な方がどれだけいるだろう?
ぼくもこの企画をするまでまったく知らなかった。「カンヌ」と言えば「カンヌ映画祭」をほとんどの人は思い浮かべるだろう。ところがこれは映画とは関係ない。クリエイティブのお祭りなのだという。それの2013年版がCannes Lions 2013 というわけだ。
いろいろと聞いているとクリエイティブの世界では相当有名なものらしくGoogle Xのキャプテン、アストロ・テラー氏や先ごろ亡くなったルー・リード氏、ファッション・デザイナーのヴィヴィアン・ウェストウッドなど世界的な超有名人による講演もあり、入賞しているのも世界的な企業ばかり。そこに世界中から企業が商談をしに来るようなのだ。クリエイティブ業界の一大イベント。最先端を知ることができる場所。それがCannes Lionsなのだ。公式サイトから説明の文章を以下に引用する。

世界にある数々の広告・コミュニケーション関連のアワードやフェスティバル。その中でも世界最大級の規模を誇るのが「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」です。 長らく「Cannes Lions International Advertising Festival」という名称で運営し、日本語では「カンヌ国際広告祭」として親しまれてきましたが、2011年から正式名称が「Cannes Lions International Festival of Creativity」と変更された事を受け、それに伴い日本語名称も「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」へ変更を致しました。 毎年6月に、1週間にわたってフランスのカンヌで開催されるカンヌライオンズの特徴は、充実したセミナーにあります。1週間に渡る会期は、毎日朝から夕方まで業界の最先端企業の数十に渡るセミナーで埋め尽くされます。また他のアワードと違う部分は、会期中に審査が行われる事です。会場では参加者が全エントリー作品を見る事が出来るので、参加者にとっては自分の観点の評価を世界のトップクリエーターで構成される審査員団の評価基準とオンタイムで比較できるという貴重な機会となります。

いやーまったく知らなかった自分がお恥ずかしい。

「公開編集+セミナー連動型」出版

本書は「公開編集+セミナー連動型」である。 先にも書いたように編集過程をオープンにし、参加者にも一部の工程に参加してもらう。ひと区切りとして出版セミナーを開催したのだ。 もう少し詳しく説明すると、 まず、編集過程はFBグループ(以下、編集G)を立ち上げ、そこでオープンにした。河尻さんが選んだ72の作品(主にCM)はこの編集Gに随時アップ。さらに、28作品については編集G内の投稿を参考に選定。もちろん重冨ADによるデザインの過程もオープンにした。出版セミナーの2週間前には公開編集部として下北沢バロンデッセのギャラリー(現Confont)でデザインの原案となった映画を見たり編集の解説をしたりもした。作業が佳境に入ってくると編集Gで手伝ってくれる方を募って動画作品の一部をキャプチャーして頂き、装丁の一部の参考にアンケートを取らせて頂いた。出版セミナーは代官山蔦屋書店で行ったので、どうせならカンヌライオンズに関わる本でフェアを組もうという話になり編集Gに選書案を募った。さらに本書内の一部文章を編集Gの方に書いて頂いた。カンヌライオンズで圧巻のパフォーマンスをしたPerfumeについての論である。

地図作成中


出版セミナー@代官山蔦屋書店

出版セミナー当日は河尻さんのお力で第一線の方々によるカンヌライオンズの解説+重冨ADによるライブ編集となった。この登壇者の方々がまたすごいようなのだが例によって分からない。参加者の方によると相当に豪華なメンバーのようなのだが。
このときほどクリエイティブ業界についてもっと勉強しておけばよかったと思ったことはない。だってせっかくの感動を味わい尽くせていない気がするのだ。これでもっと詳しければ当日は感動のあまり失禁してしまえたかもしれないというのに! いや、すいません、汚いですね。失礼しました。まあ当日は現場対応でそれどころではなかったのだけれど(笑) お陰様で当日の動員数は80名と当初の予定を大幅に超えることができた。嬉しい限りなのだがそれと同時に驚いた。
実は企画当初は「10名集まればいいよね。集まらなかったら無かったことにしようw」という話をしていたのだ。イベント業界に詳しいわけではないが、恐らくこんなカタチのイベントは日本初(違っていたらごめんなさい)だろうしコンテンツは河尻さん曰くマニアックだし。このウェブの時代にわざわざ紙でそんなマニアックなイベントのまとめを。しかもこんな分かりにくいやり方のものに参加したがる人は少ないだろう(値段も5,000円と高いし)と予想していたのだ。
ところがどっこい蓋を開けてみれば大盛況だったのである。 セミナー参加者は自動的に本書の購入者でもあるとしていたので約79冊。編集Gの中から希望者に通販で49冊。店売で4冊。合計で132冊の売上(店売は現在も継続中)となった。世の中、何が起こるか分からないものである。購入者の方々はもちろん編集Gの参加者の皆様にも心から感謝したい。

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すごいぞ! 金羊社のオンデマンド出版!

ところで、この企画成功の重要なファクターのひとつに金羊社のオンデマンド出版がある。見学しに行ったからこそ分かるがそれはもうすごいのである。ひと昔前までのオンデマンド出版といえば一部の同人誌や自費出版物にあるような残念な、良く言えば手作り感があるようなものだった。だから、当初はどんな本になるのか一抹の不安がなかったといえば嘘になる。ところが、である。金羊社のオンデマンド出版はすごかったのだ。何がどうすごいかというとぜひ現物を取って頂きたいのだが端的に言えばアートブックが作れるのだ。以下のリンクから飛んで欲しい。
15,750円の本である。もちろん値段が全てでは無いし少部数出版だから高いだけだと思われるかもしれない。しかし、手にとって見れば分かる。それはもう無茶な造本なのである。一冊一冊が表紙が違ったり中が繰り抜いてあったり。もちろんビジュアルも素敵で言うまでもなく最高の印刷である。納得の値段なのだ。

金羊社オンデマンド印刷機


本書の内容は?

そんなスーパー・オンデマンド出版を使った本書。肝心の内容であるが以下のとおりである。

書名

『CREATIVE CONTEXT -世界のCreative Contextを知る手がかり-』

商品内訳

  1. 合羽橋にある専門店でオーダーメイドした缶
  2. 河尻享一氏のキュレーションによる作品72と編集Gによるキュレーション28。計100作品をキャプチャーしたポラロイド風プリント
  3. ポラロイドを貼り付けてカンヌライオンズの勉強をしたりアイデア帳として使えるクリエイティブ手帳(奥付には購入者の名前をEDITORとして記載)
  4. 100作品の出品地域が分かるCreative Mapと編集Gの一部始終・Perfume論を載せたStory of this projectが両面に印刷されたもの

奥付

  • Editor & Contributer:購入者の方々(実際は購入者の方々全員の名前が書いてあります)
  • Event Guest:石井うさぎ・石井義樹・谷口正人
  • Art Direction:重冨健一郎
  • Design:津金雄三・成島淳一
  • Illustration + Graphic Record:清水淳子
  • Book Produce:和氣正幸
  • Event Contribution:高橋直貴(代官山蔦屋書店)
  • Product Coordination:大山昌志、中村博久(金羊社クリエイティブワークス)
  • Printing & Finishing:熊谷直樹、伊東正幸(金羊社デジタルファクトリー)
  • Curation:河尻享一
ちなみに1の100作品はポラロイド風にするために白を5度塗り(!?)したもので紙は外国から取り寄せだったりする。これに編集Gへの参加、出版セミナーへの参加を含めて5,000円(店売では委託のため8,000円。代官山蔦屋書店1号館ビジネス書売り場で2013年1月末まで販売中)である。今、考えてみると最初期の弱気が嘘なほど高クオリティの作品となった。これで5,000円は相当割安だろう。

地獄のアッセンブリ・パーティー

内容まで紹介していて何だが実はひとつ紹介していなかったことがある。アッセンブリ(組立)・パーティーだ。 本書はけっきょく出版セミナーでの入稿は叶わず10月発行となってしまったのだが、印刷も終わり缶も揃ってさあ出荷という訳にはいかない。組立作業をしなければいけないのだ。 日時は2013年9月30日15時から。金羊社オフィスの一部をお借りして組立作業を行ったのである。プロデュースの私はもちろん。編集の河尻さん、重冨AD、金羊社の中村さんなどなど関係者はほとんど集まり、それだけでは人出が足りるわけもないので編集Gで手伝って下さる心優しき方を募って単純作業を黙々とやり続けて苦闘8時間。ようやく完成と相成ったのである。最後の一体感といったら学園祭の前日のような青春を感じさせ感動もひとしおであった。ビバ・アッセンブリ・パーティー!
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受け取った時点で完成ではない!

そんな関係諸氏の素晴らしい仕事によってできたのが本書であるのだが、実は本書はこれで完成ではない。 中身に「ポラロイドを貼り付けてカンヌライオンズの勉強をしたりアイデア帳として使えるクリエイティブ手帳」とある。なぜ本書をこのような形にしたのか。それは重冨ADが本書デザインのアイデアを得た映画を解説しなければいけない。その映画とはヴィム・ヴェンダース監督のロードムービー「都会のアリス」である。詳しくは観て頂くとして、この「都会のアリス」に出てくる主人公がポラロイド写真を入れる缶から着想を得たのだ。 何が言いたいのかというと、カンヌライオンズに行って欲しいということである。本書とともにカンヌライオンズに行き、ぜひカンヌライオンズ2014で使って欲しい。「都会のアリス」の主人公・フィリップのように旅の友として欲しいということなのだ。 だから、本書は受け取ったその時点では完成していない。自分なりに使い込んでいったその結果が完成品なのだ。

もっと出版を、本屋を、楽しくする

この企画でぼくがしたかったことは「もっと出版を、本屋を、楽しくする」ということだった。 KDPがオープンされてからしばらく経ち電子書籍での自費出版がようやく面白くなってきた。KDPではないが月収100万円を達成した人もいるらしい。
また、紙での自費出版ブーム(いわゆるzineブーム)も好調で、自己表現のひとつの手段として定着したように思う。
そうやって個人での出版がどんどんと気楽になり定着しつつある一方で相変わらず出版業界は不況で本屋は減少する一方だ。 こういう状況で面白いことってなんだろう? 出版を、本屋を、楽しくするためにできることってなんだろう?

出版のあたらしいカタチ

思いついた。みんなで出版するというのはどうだろうか。 個人出版は先に挙げたようにもう珍しいものではなくなっている。でも、みんなで出版するというのはどうかというとあまり聞いたことはない。それに出版というとどうしても作家と編集という狭い関係の中で作るイメージがある。これを変えられないか。編集過程に読者を参加させることで今までとは違ったあたらしい出版のカタチを示せると思ったのだ。

読者ひとりひとりが関わった本を売る

本屋を盛り上げるという視点から言うと、本屋の利点は空間を持っていることである。当たり前のことかもしれないけど大事なことで、というのもメイン商材の本が売れないのだ。だったら他のものも売るしかない。そう考えたときに本屋が「本を売っている空間」であることがとても大事なことのように思えた。リアルにあってネットにないものを大事にしたかった。 「空間を使って本屋を盛り上げること」と言えば著者トークショーや古本市があるが、それじゃありきたりだ。せっかくならやられたことのないことをしたい。それでこういうことになったのだ。 加えて言うと売られていることの中身を見せれたら面白いということもあった。モノを作っているその過程を見せて参加してもらって、読者ひとりひとりが作ったもの関わったものを本屋で売りたいと思った。そうすれば届けたい人に届けたい本を届けることができる(届けられる人がいなければやめればいいし)。

本屋とSNSで開催されたひと夏のお祭り

つまり、何をしたかというとこの企画の本質は「参加型」であるということなのだ。運営はいるが主役は参加者ひとりひとり。これは「本屋とSNSで開催されたひと夏のお祭り」なのだ。その結果、予想外の成功を得ることができたことは本当に嬉しい。カンヌライオンズというコンテンツはもちろん、この「公開編集+セミナー連動型」出版という試みを面白く思って頂けていたならプロデューサー冥利に尽きる。

最後にお礼

最後に、こんな何人集まるかもわからない謎の試みに賛同して協力して頂いた方々にお礼を申し上げたい。 編集の川尻享一氏。働くキュレーターLABのときから本当にお世話になっております。夏は全部この企画で終わってしまいましたね。初期に仰っていた通り、「忘れられない夏」になりました。編集の実作業についてお手伝いできなかったことが本当に心残りです。特に印刷のときは現場に行きたかった! 実質3ヶ月間。そもそも河尻さんがいなければ生まれることすらなかった企画です。まさかの大成功ですがそれもこれも河尻さんのお陰です。本当にありがとうございました!

ADの重冨健一郎氏。多忙な中、突貫作業的スケジュールで完成させて頂いて本当にありがとうございました! はじめは雑誌と言っていたのにまさかの「缶」を出してこられた時は最高に痺れました! こんなカッコイイ本ができたのも重冨さんのお陰です。

印刷を頼ませて頂いた金羊社クリエイティブワークス・担当の中村博久氏。色々と無理を聞いて頂きありがとうございます! 金羊社さんのご協力がなければここまでのクオリティのものはできなかったと思います。ありがとうございました!

代官山蔦屋書店の高橋直貴氏。こんなどこの馬の骨とも知れないぼくの話を聞いて頂き、しかも、こんな謎の試みに場所を貸してくださるよう上と掛け合ってくださったこと。本当に感謝しています。高橋さんのプレゼンがなければ、あの暑い一日は実現できなかったかもしれません。ありがとうございました!

イベントでリアルタイムまとめ(グラフィック・レコード)をして頂いた清水淳子氏。毎度のことですが本当にしびれます。ノートにイラストも頂きまして。お蔭さまで素敵な企画となりました。ありがとうございました!

最後に、購入者の皆様はもちろん、編集Gに参加して頂いた皆様。ありがとうございました! この企画、というよりお祭りはみんなで作り上げたものです。普段は出版に関わっていない方も関わっている方も一緒にこのお祭りに参加して完成(とりあえずの、ですが)させたものです。そして、これからそれぞれがノートを使い込んで自分だけの「カンヌ缶」を作り上げてください。 またどこかの本屋で会いましょう。 本当にありがとうございました。

カンヌ本 完成品写真①のコピー

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