【BOOKSHOP LOVER TV番外編】話題のブックカフェ「BOOK LAB TOKYO」のCEO・西村創一朗さんに聴くあたらしい本屋の育て方


『東京わざわざ行きたい街の本屋さん』でも取り上げた2016年6月に渋谷道玄坂に誕生した新刊書店&カフェの「BOOK LAB TOKYO」。このエリアの中ではゆっくりできる貴重な場所なので渋谷に訪れた際には必ず寄る場所だった。

ところが、オープンから約1年経った2017年8月1日。CEOを交代するという記事を目にする。しかも、「月間150万円の赤字をどうにか黒字にしないといけない」というのが理由だ。

オープン当初から、渋谷の駅から徒歩すぐという立地の場所に新刊書店をつくるとは「なんて挑戦的なんだろう!」と驚き、その上、書店員としての経験もない出版業界にいたわけでもないIT起業家が作ったというので応援していたが、まさかそんなことになっていたとは。

IT起業家がつくり、複業研究家が立て直すという他の本屋にはない文脈のBOOK LAB TOKYO。新刊書店の立て直しをどう行うのか。CEOを交代してちょうど1ヶ月経った2017年8月31日に、新CEOの西村創一朗さんに今までの手応えと今後の展望を聴いてみた。
(以下、西村創一朗さん=N、和氣=Wとして書いていく。)

お店のファンが経営を任される

W よろしくお願いいたします。

N 8月1日からBOOKLAB TOKYO(以下、BLT)のCEOになりました。西村創一朗と申します。本日はよろしくお願いします。

W 株式会社HARESの代表、また、複業研究家として活躍されている西村さんですが、プロフィールを拝読すると本屋や出版とは今まで無縁だったように思います。なぜBLTのCEOを引き受けることにしたのでしょうか?

N 人生のキャリアで言うと本屋さんとは無縁でした。ただ、月4,50冊くらい読む本の虫ですし、僕の人生は本を抜きにすると語れないくらいに本が大好きです。いつか老後に自分でも本屋をやりたいとは思っていました。

ずっとBLTのことはお客さんとして使っていたんですよ。僕はずっとコミュニティマネージャーとして仕事をしています。いろいろなコミュニティを運営していく中で、企画者として、またときには登壇者としてBLTで10回以上はイベントを開催していると思います。朝活イベントや採用イベントなどですね。なので、ここが無くなったら困ると。

いろいろな事情があってBLTの経営を立て直さなくてはいけない、となったときに、BLTのオーナーの鶴田くん(鶴田浩之氏。BLTのオーナーであり、Labit Inc.のCEO)と仲が良かったので「ぜひ西村さんに任せたい!」とお願いがありました。断る理由がなかったので引き受けました。


W 本屋に関わる仕事の経験が無い中で、自分にオファーが来た理由は何だと思いますか?

N 理由は2つあると思っています。ひとつは彼(鶴田さん)も言っていたのですが、まず僕がBLTの超ヘビーユーザーであることです。このお店を「もっとこうなったら良いのに……」というようなお客さん(ユーザー)視点で考えられるということですね。

もう1点、こちらのほうが重要だと思っています。経営者として見たときにBLTは「本を置く」「コーヒーを出す」ということだけでは難しい状況にいます。そんな中で、「このBLTという場所をコミュニティに仕上げていく。そうすることで新しい価値を作り上げていく。それが重要なんじゃないか」という彼(鶴田さん)なりの仮説がありました

僕はずっとコミュニティをつくることを仕事にしてきたので「コミュニティを核にしてBLTを再生してくれるんじゃないか」という期待があって声を掛けてもらったのだと思います。

コミュニティの核としての本屋をつくる

W 今日でちょうどCEOになってから1ヶ月(取材日は8月31日)ということで、これまで新しく行った施策をご紹介いただければと思います。

N 新体制になって始めたことは大きく分けて2つあります。1つはイベント&コミュニティ事業です。7月31日以前もゆるやかには行っていたことではありますが、それをさらに積極的に進めていこうという施策です。例えば、BLT主催のイベントを開いたり、「BLTでイベントをしませんか?」と営業したりなどということですね。

W 「コミュニティ」としてはどういった施策をされているのでしょうか?

N マイクロオーナー制度です。僕自身、小さな頃からの夢として「いつかは本屋になりたい」と思っていました。本が好きな方って多かれ少なかれ同じ思いを抱いていると思うんですよ。実は僕は競馬が好きだったりするんですけど、競馬ファンの夢って馬主(馬のオーナー)になることなんですよ。

馬1頭のオーナーになることって難しいと思うんですけども、競馬だと一口馬主という制度があるんです。独占的なオーナーではないんですけど、1頭の馬に対して複数人がオーナーになれる、という制度です。それの書店版があっても良いんじゃないか。そう思ってマイクロオーナー制度「BOOK LAB OWNER’S CLUB」(以下、BLOC)をつくりました。


「月額15,000円でBLTのマイクロオーナーになりませんか? しかも、先着100名は10,000円でなれます。」ということで募集しています。ありがたいことに8月31日時点で80名の方がマイクロオーナーになってくださっています。

W マイクロオーナー募集のページで、”「まったく新しい読書体験」を共創していきます。”とありますが、具体的にどういったことでしょうか?

N 3つあると思っています。1つ目が「みんなで読む」ということです。どういうことかというと、人は自分のストーリーと重ね合わせて本を読むと思っています。つまり、同じ本でも10人いれば10通りの読み方がある。それをシェアしていこうというものです。読書体験のシェアリング、いわゆる「ソーシャルリーティング」というものですね。

もう1つが「本の著者を招いて話してもらう」というものです。従来の出版記念講演のやり方ですと著者「が」語る会になると思います。ですが、BLTでのイベントでは、著者「と」皆が語る会を開いています。出版裏話なども含めて、皆が著者とフラットに語る会です。

最後の1つは出版です。8月30日にBLOCの仲間たちと初めてミートアップ(本について話す会)を開きました。本について話す、ということはその本を通して話す人自身の人生が語られるということでもあります。そうやって語られたストーリーを1つのテーマのもとに集めて本にするだけでも面白いのじゃないか。この出版によって「読者が著者に変わっていく」ような読書体験を提供できると思っています。

W BLTが”つくる人を応援する”というテーマで始まった本屋だと考えると、BLTのマイクロオーナーが作る人になっていく、ということは意義深いものがありますね。

新しく始めた施策は大きく分けて2つあるとおっしゃっていました。1つ目は今までお話いただいた「イベント&コミュニティ」。では2つ目は何でしょうか?

メディアとしての本屋

N 「MEDIA LAB」事業です。このBLTの空間そのものが大きなメディアなんじゃないか、と考えています。例えば、フェア台や、壁に設えられた本棚。この本棚も、テーマを設定して、選書をして、売り場を作っていく。これって本屋がメッセージを発信している、ということだと思いませんか。

「メディアはメッセージ」(M・マクルーハン『メディア論』より)という言葉がありますが、MEDIA LABでは本屋という場所を使ってメッセージを届けていく、ということを考えています。僕らがBLTとしてメッセージを発信していくということも大事ですが、企業がメッセージを発信したいときにマーケティングの拠点としてBLTを使って欲しい。

新聞やテレビに広告を出稿するのと同じような形でBLTという書店に広告を出して欲しい。そのときの僕らの特徴が「本(と本とのつながり)が作り上げるメッセージ」なんです。

W 具体例としてはどんなものが挙げられますか?

N まだ具体的な企業名を挙げられるフェーズではないんですけども、例えば、IoTのデバイスをクラウドファンディングで資金を集めてつくる、といった試みがたくさんあると思います。ですが、IoTは物なので実際に触って使ってみないとその価値がわかりません。

BLTでは、そういったIoTデバイスのプロトタイプを実際に店に置くことで使ってもらうようにしようと思っています。さらに、ただ置くだけでなく関連書を一緒に並べます。例えば、「匂いを嗅ぐことでビジネスの生産性が上がるフレグランスを出すデバイス」があるとしたら、匂いによって生産性が上がる、といった内容の脳神経科学の本を一緒に並べます。このように本と商品をうまく組み合わせた提案ができればと思っています。

W MEDIA LABということはオンラインの施策もありますか?

N BLTの強みはリアルな書店を持っていることと、オフィシャルサイトがちゃんとあることです。例えば、フェアで特集をしたとしたら、その特集にちなんだイベントを行い、イベントのアーカイヴをサイトにアップ、拡散させていくといったようなオフラインからオンラインまで一気通貫してメッセージを届けられるような仕組みを作っていきます。

「客と店」ではなく「仲間」という関係性をつくる

W そんな新施策を一ヶ月間進めてきたわけですが、今のところの手応えと今後の展開について、どう思われていますか?

N コミュニティについては、想像していたよりも多くの方にご賛同いただいています。いわゆる会員制度だと「You & I(お客さんとお店)」といった関係性になるかと思いますが、マイクロオーナー制度ではお店の作り手のひとりになってもらうことによって、関係性が「We(一緒にお店を作る仲間)」になれたことが大きいかと思っています。

例えば、マイクロオーナーの方に選んでいただいた「無人島に持っていきたい一冊」というフェアを9月1日からはじめます。選書をお客さんと一緒にやるって今までなかったじゃないですか。BLOCというコミュニティがあることによって一緒に棚作りをすることができました。ほかにも、カフェなのでメニュー開発をするのですが、それもマイクロオーナーの皆様と一緒に開発しています。

BLOCのマイクロオーナーとの共同開発メニューの試作品。
映像では9/1から提供と話しているが、9/7時点で提供はされていない。



W MEDIA LAB事業についてはどうでしょうか?

N MEDIA LAB事業については、これからだと思っています。BLTのスペースを使いたいというお声がけはいろいろなところからいただいています。例えば、いま既にウェブメディアを展開している企業様からのものです。

彼らは、オンラインでの読者との関係性は持てていますが本当はもっと読者と繋がれる場を作っていきたい、という課題を持っています。ただ、自前でそういう場を作るのは難しい。そうなったときに「バズった記事を書いた人と直接語れる、といったイベントを開くときの拠点にしたい」というようなお引き合いをいただいています。

そのほかにもたくさんのお声がけをいただいていて、BLTは100人いたら100通りの活用の仕方があるメディアなんだということを実感しています。

W それを踏まえた上ではありますが、ぶっちゃけた話、あと1ヶ月で目標である黒字転換は達成できそうですか?

N イケると思います。ただ、たった60日間で決して少なくはない月150万円〜200万円という赤字を黒字転換できるのか。はじめた当初は半信半疑だったところはありました。今は全然イケるなっていう感覚になっています。

W BLOCで既に月に80万円近くの支援があるので、赤字の半分程度は既に解消されていると思います。では、残り半分はどのように解決するのでしょうか?

N MEDIA LABとあとはイベントで十分挽回できると思っています。というのも、現時点で「朝、イベントをやるならBLT」みたいなブランドが徐々にできつつあります。

例えば、8月28日に開催したBOOK LAB AUTHOR’S TALKという著者が語るイベントでは、朝7時半からであるにもかかわらず80人のお客様が申し込んでくださってキャンセルがほぼ0名でした。1ドリンク付きで1500円のチケットですので単純計算して12万円の売上が1朝にして立ちました。CAMPFIREでも”BOOK LAB TOKYOに対しては大きなポテンシャルを感じていた”と書きましたが、まさにそれが実証されたということですね。

本と珈琲では儲けません

W 最後にお聴きしたいことがあります。BOOKSHOP LOVERは本屋になりたい方のメディアでもあります。BLTとして様々な施策をされていることはわかりましたが、正直なところ、売上における本の割合はどれくらいになるでしょうか?

N 正直な話ですね。本も珈琲も売上はとにかく利益としては見ていないです。今回、一番大きな方針展開は本と珈琲で儲けませんという意思決定なんですよ。

BLTは60坪あるのですが、すべてを本屋として考えると3万冊程度のキャパシティがあります。でも、カフェスペースがあるから1万冊〜1万5千冊程度しか並べることが出来ない。カフェとして考えたときも本棚があるので席数を増やせない。そういう問題があるので、本と珈琲についてはBLTに来たお客様の体験価値を高めるための道具とし、別なところで儲ける。それが「イベント&コミュニティ」と「MEDIA LAB」なのです。


W 最後に、BLS読者、そしてBLSTVの視聴者の皆様にメッセージをお願いします。

N BOOK LAB TOKYOは渋谷道玄坂にある”つくるひとを応援する書店”というコンセプトでやっています。僕自身、大好きな本屋さん、大好きなカフェですし、絶対に存続させたいと思っています。9月末までに黒字化させることがミッションなので、ぜひ遊びに来ていただければと思っています。「BOOKSHOP LOVER、BOOKSHOP LOVER TVを観て来た」と言っていただければ20%オフでご提供したいと思っていますので、皆様のご来店をお待ちしています。

W ありがとうございました。

東京都渋谷区道玄坂 2-10-7新大宗ビル1号館 2F
営業時間:7:00〜19:00 (18.30 L.O)
※ 2017年8月は朝7時から営業いたします。
※ 19:00以降はイベント営業のみ行います。
定休日:年末年始
URL:http://booklabtokyo.com/
Twitter:https://twitter.com/booklabtokyo
Facebook:https://www.facebook.com/booklabtokyo/



西村創一朗

採用プロデューサー/働き方改革コンサルタント/複業研究家。1988年、神奈川県生まれ。 首都大学東京法学系を卒業後、2011年に新卒で株式会社リクルートキャリアに入社し、法人営業(MVP複数回受賞)、新規事業企画、採用担当を歴任。本業の傍ら「二兎を追って二兎を得れる世の中をつくる」をビジョンに掲げ、2015年に株式会社HARESを創業。2016年末にリクルートキャリアを退職し、独立。プライベートでは8歳の長男、5歳の次男、0歳11カ月の長女の三児のパパ。NPOファザーリングジャパン理事。週末は地域の少年サッカークラブのコーチも務める。 # その他SNS/URLなど
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