「縁をおすそ分けする」 コピーライターが仕掛けるライブラリーのあらたなカタチ

感想文庫01
恵比寿に新しい本のスペースができた。

知人からそんな話を聞いたのは4月も半ばを過ぎた頃だ。恵比寿には本屋が多い。NADiff a/p/a/r/tやPOST、MUJI BOOKS、シスなどアートやライフスタイルに関する本屋だ。そんな場所にライブラリーができるというのだ。これは行かなければ!

今回伺った「感想文庫」は恵比寿ガーデンプレイス グラススクエア広場に期間限定で出現したCOMMON EBISUというスペースのライブラリーだ。仕掛けるのは阿部広太郎さんというコピーライター。

感想文庫にある本はすべて訪れた人が提供(寄贈は1人5冊まで)したものだ。来訪者はそれらの本を借りることができ、返すときには裏表紙にある紙に感想を書いて、訪れた人とその感想を共有するという試みだ(もちろん本を提供しないでも良い)。実は「西国図書室」など似たようなことは既に行われているのだが「感想文庫」という名前が気になった。シンプルで何をしたいのかが明確な名前。なぜ今まで誰も使わなかったのだろうか、とさえ思わせてくれる。そんな名前。

コピーライター。言葉ひとつで商品やサービスを伝える職業の人間がつけたからにはこの名前にも意図があるはずだ。いや、名前だけじゃなく、なぜ本の活動を行うのかについても聞いてみたい。コピーライターの立場からならいままで聞いたことのない景色が見えるはずだ。

そう思って感想文庫を企画した阿部広太郎さんに会ってきた。

縁をおすそ分けする



拝見した感想文庫の企画書

拝見した感想文庫の企画書



和氣 感想文庫という名前が良いですね。なぜこの名前にしたのでしょうか?

阿部広太郎さん(以下、阿部) それを説明するために、僕が今回の企画に関わることになった経緯は企画のことからお話ししますね。COMMON EBISUという場のメインコンテンツとして「本で人と人とが繋がるシティライブラリーをつくろう!」と恵比寿新聞の編集長 高橋賢次さんが発案されて、「でも名前をどうしよう?」と、相談をいただいたんです。

そこで、まず、COMMON EBISUという場所について考えました。COMMONと聞いたときに和氣さんはどんなことを思い浮かべますか? COMMONを辞書で引くと「共に持つ」。COMMON SENCE=常識・良識という言葉も思い浮かびます。この言葉を持つ意味を自分なりに定義してみたんですね。それが、良いものを相手と分かち合う「おすそ分け」だったんです

COMMON EBISUのライブラリーがおすそ分けできるもの、それは「縁」だなと。本を借りるためにこの場に立ち寄って、本を返すためにまた立ち寄る。それだけじゃなくて、借りた本に以前借りた人の感想が書いてあったら嬉しいと思いませんか? 本の内容ももちろん大切ですが、読んだ人がどんな感想を持つのか、それもすごく大切だなと。感想から、見ず知らずの人ともゆるやかな縁ができて、本で人と人を繋げたいと思いました。このことを最も表現できる言葉は何かと恵比寿新聞の高橋さんに提案して決まったのが「感想文庫」という名前です。

感想文庫05
和氣 阿部さんはまちライブラリーをご存知ですか? 実は感想文庫のことを知ったときから、まちライブラリーと同じことをやっているのではないか、と思っていたのですが。

阿部 もちろん知っていますし、目指していることは同じだと思います。「まちライブラリー」や「図書館」という響きは、本好きの方は反応してくれると思います。ただ、今回は本好きの方だけではなくて、普段は本を手に取らないような方でも名前が気になって、COMMON EBISUに訪れて、本と感想を眺めてしまう。そんな場になるといいなと思ったんです。

縁がテーマなので、今回のCOMMON EBISUだけではなく、同じ試みが他の場所にも広まっていってくれたらと思っています。実は、「感想文庫」というシンプルな名前も他の場所でも使いやすく、伝わりやすいようにと考えた結果でもあります。今後、運用マニュアルも公開予定です。

本の世界を応援する

写真右が阿部広太郎さん。左は和氣。

写真右が阿部広太郎さん。左は和氣。



阿部さんは企業に勤めながら、感想文庫の他にもThe OPEN BOOKのようなこともされていますよね。それはなぜでしょうか?

もちろん本が好きだから、の一言に尽きるのですがそれだけだと答えになりませんよね(笑) 中学時代に本に救われた経験から、いつか本に関わる仕事をしたいという想いがありました。アメフトをはじめて、チームで一体感をつくることの魅力に触れ、いま広告会社で働いてます。仕事のないオフの時間に、本に関わりたいという思いで行動してきて、そうして実現したのがThe OPEN BOOKであり、今回の感想文庫でした。

直接本を売る。本屋になる。という選択肢ではないんですね?

『風とロック』などで有名な箭内道彦さんの言葉で「広告は応援だ」というものがあります。自分のコピーを活かして僕は本の世界を応援したいんです。

阿部さんは本に関すること以外にも、ほんちゅの連載コラム「待っていても、はじまらない」やBUKATSUDOでの「企画でメシを食っていく」などたくさんの活動をされていますが、それも「応援する」という気持ちからでしょうか?

高校時代に応援団長を任されたとき「人は応援されることでこんなに頑張れるんだ」と気付きました。それ以来、自分が面白いと信じることや人については、何か力になりたいと、積極的に行動を起こしています。そして僕はコピーライターであるからこそ、「言葉の人」であり、それ以上に「行動の人」でありたいと思っています。自分の「面白い」を信じて行動することで、ポジティブな一体感をつくりたいんです。

和氣 最後に、阿部さんの人生の1冊を教えて下さい。

『恋する日本語』です。僕たちが当たり前のように使っている言葉。考えてみればその言葉を考えた人がいる。その人は、ある日突然、その言葉をぽんと思い浮かんだ訳ではなく、その言葉にたどりつく物語があったんだよな……言葉に込められた物語を解き明かしていく『恋する日本語』を呼んで、言葉の面白さに惹きこまれました。読み終えた時から、世界の見え方が鮮やかに変わっていく感覚を今でもよく覚えています。言葉は、面白い。その面白さをもっと見つけていきたい。そう思わせてくれた大切な1冊です。

先に挙げた「待っていても、はじまらない」のほかにもTCCリレーコラムやnoteを読んでから阿部さんにお会いしたのだが予想以上に熱い方だった。感想文庫やこれまで応援してきた人について情熱的に語る阿部さんは本当に魅力的で、「この人に応援されたらどんなに嬉しいだろう」と思わせてくれた。

感想文庫(COMMON EBISU)は恵比寿ガーデンプレイス グラススクエア広場にて、8月末まで開催予定だ。期間中は自由に滞在できるパブリックスペースとして開放されており、各種イベントも企画されている。5/28(土)にはトークイベント「第1回目:31文字の可能性」も開催予定だ。

行って恵比寿の縁をおすそ分けしてもらおう!
感想文庫02

1986 年生まれ。2008 年に電通入社。人事を経て、コピーライターに。東京コピーライターズクラブ会員、30オトコを応援するプロジェクトチーム「THINK30」所属。「世の中に一体感をつくる」という信念のもと、言葉を企画し、コピーを書き、人に会い、繋ぎ、仕事をつくる。言葉を味方に、大きな問題を発見して解く。「言葉の人」であり「行動の人」でありたい。「待っていても、はじまらない」の姿勢で今日も活動中。宣伝会議コピーライター養成講座「先輩コース」講師、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」モデレーターなど(撮影:エリザベス宮地)

コメント

  1. […] 大きな問題を発見して解く。 「言葉の人」であり「行動の人」でありたい。 [紹介元] 「縁をおすそ分けする」 コピーライターが仕掛けるライブラリーのあらたなカタチ | BOOKSHOP LOVER […]