ぼくのタナカホンヤ(1)

縮小タナカホンヤ アイキャッチ

はじめまして。
タナカホンヤの田中宏治です。
東京メトロ千代田線根津駅2番出口から徒歩1分、不忍通りの裏通り(忍小通り)で古書&ギャラリーをやってます。

2012年5月に開店して4年目になります。

古本屋ですがいまだに買取もせずにやっているのは、古本屋としてやっていく自信も覚悟もないからで、自分にできる規模のお店でやっていこうと思うと、興味のある本を古本屋さんをまわって買ってくるのが性に合うというわけです。

そうやって様々な古本屋さんからあるべき姿を学んだり、いい本をみつけて安く買うことができたときは、なにより嬉しいことであり、普段物欲や趣味の少ないぼくにとってのストレス解消にもなっています。

古本屋としては理解できないかもしれないですが、これがタナカホンヤなのです。

そんなぼくのタナカホンヤのことをこちらで連載できるなんてBOOKSHOP LOVERさんは奇特な方です。お粗末な文章ですが、おつきあいいただければなによりです。

タナカホンヤはこうしてはじまった

2010年8月のおわり、親戚の結婚式に参加するため沖縄に向かった。
式の翌日はレンタカーで親たちと観光して、空港まで送り、そのあとの数日はひとりぶらぶらと那覇で過ごす。那覇の街でぶらぶらしていると、とくふく堂(現在は市場の古本屋ウララ)という本屋で1ヶ月間行われる貸本屋企画を見つけた。
これはとくふく堂がフランス視察旅行に出る間、場所貸しをするというものでぼくはすぐに相談して借りることにした。

ここ、とくふく堂は牧志公設市場そばのアーケードの中にあって、地元客も観光客も行き交う賑やかさが、市場特有のごちゃっとした、魅了されるような雰囲気をつくっている。この場所でお店をやることで何かが起こりそうな場の力を感じたからだ。

東京に戻り那覇での生活の準備をしながら自分の蔵書に値付けして荷物を郵送、2週間後には再び那覇に向かった。これは絶対に楽しいという強い衝動だけだった。

このときからタナカホンヤがはじまったのだと思う。

とはいえ、本当はタナカホンヤは那覇での1ヶ月間の生活後、東京に戻り前と同じようにバイト生活がはじまったときに終わったと思っていた。
それが2012年、思いがけずタナカホンヤを東京ではじめることになったのだから人生何が起こるか分からない。

いきさつはこうだ。この年の1月、東京の実家で暮らしていたぼくに母から突然に引っ越しを告げられる。兄夫婦と同居するけどあんたどうする、と。どうもこうもなくひとり暮らしをすると答えた。けど、なんかつまらないからタナカホンヤをやってみようと思ったんだ。

それからは怒濤の日々だった。

実家を売りに出すため3月31日までに出るように言われたので。
とにかく住居兼店舗を探したが、当然ぼくの予算に合う物件はみつからなかった。何も決まらないまま期日が迫っていたとき、この根津の店舗物件に出会った。住居は別に探さなくていけないから予算を超えるけど、お店をやるならここだと直感で決めた。

この町に知り合いはいなかった。

好きな町で遊びに来ていたけど、まさかこの町でお店を始められるとは思っていなかった。
近場で住居も決まりひと安心したところで、お店をどうやってはじめればいいのかすらわからなかった。ウソのような引っ越しがきっかけの勢いだけのはじまりだった。

つづく