本屋の種類を4つに分けてみた。 〜リトルプレス『WYP』川口瞬インタビュー〜

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どうも! こんにちは! BOOKSHOP LOVERです!
と、いうわけで元気よく入りましたが、タイトルの4つに分けるやり方は『WORLD YOUTH PRODUCT』(以下、WYP)の川口瞬さんによる発案だったりします(笑)

川口さんをはじめて知ったのはSPBSのこのトークイベントでした。
WYPvol.1の取材でデンマークに行ったついでに周ったというヨーロッパの本屋たち。8都市(ロンドン、パリ、ブリュッセル、アントワープ、アムステルダム、ベルリン、ミラノ、ローマ)で70の本屋に行かれたそうです。
人気書店の見つけ方や具体的な店名は元記事を読んでいただくとして、川口さんはヨーロッパの人気書店をマス向け・コア向け、アート寄り・文学寄りの2つの軸で4象限に分けておりました。

ヨーロッパの書店 4つの形態

これを見て、「日本の本屋に適用したらどうなるだろう?」「や、適用するにしてももう少し詳しいことを聴きたい」などなど気になることがどんどん出てきました。そこで、思い立ったが吉日ということですぐにインタビューを敢行。

ヨーロッパの本屋と日本の本屋の違いやこれからの本屋について聴いてきましたよ!
(この記事「あたらしい街の本屋 B&Bと天狼院書店」を別の角度から検証できた実り多いインタビューでした! WYPの購入はこちらから!)


日本でアート系本屋は難しい?

まず、気になったのがこの点です。どうもSPBSイベントの際の話ぶりからは、ヨーロッパではアート系本屋が多く成り立っているが日本では少ないのではないかという疑問を持ちました。
そこでズバリ聴いたところ、「ヨーロッパ全体でというよりはパリが特別で、ほかの都市ではひとつかふたつ程度だった」とのこと。つまり、東京をひとつの都市と考えれば、NADiffやPOSTなどヨーロッパと比べて一概に少ないとは言えないのです。
客層に関して聴いてみるとヨーロッパのアート系本屋では子連れ客もよく見かけたそうです。
対して、先ほど挙げた日本のNADiffやPOSTに20代後半以降の大人が多い。ヨーロッパではアートが生活に根付いているのでしょうね。だから、子どもを連れて気軽に行ける。「日本ではアートが売れない」ということの一端がこんなところにも垣間見れるような気がします。

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大型書店の雰囲気は?

これも気になります。ヨーロッパに行ったことのないぼくからすると、ヨーロッパというだけで大型書店もカッコいいような気がしますが実際はどうなんでしょうか?

聞いてみると、実際はそうでもないような場所もあるようですね。雰囲気などについては行ってみないと分からないでしょうが、川口さん曰く「普通の街の本屋を大きくしただけみたいな店」も多いようです。
ただ、そんな中で最も興奮したというのがロンドンのフォイルズ。吹き抜けの5階建の大きな建物を生かしてカフェやCDショップも併設し、オリジナルバッグはもちろん村上春樹の『1984』オリジナルカバーまで出すほど。資本を贅沢に生かした、代官山蔦屋のような大型書店はヨーロッパにもあるようです。

ライフスタイル提案型本屋とは?

実は一番気になった点がここでした。
川口さんは先に挙げた「ヨーロッパの人気書店、4つの形態」の中で、ヨーロッパの人気書店を「A:大型」、「B:重鎮」、「C:アート」、「D:ライフスタイル提案型」の4つに分けています。
具体的にヨーロッパのどの本屋がどこにあたるのかについては記事を読んでいただくとして、ヨーロッパではライフスタイル提案型の本屋が流行っていると川口さんは仰っていました。さらに、日本でもこのライフスタイル提案型本屋が流行り始めている、とも。

本以外にも雑貨を置いていて、本を生活を豊かにするためのツールの一つとして提案しているようなところです。パリのアルタザート書店、ベルリンのGestalten Spaceなどがそうでした。東京でいうと渋谷にあるSHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS、下北沢にあるB&Bだと思います。ただし、一つ違うのは、SPBSやB&Bには小説などの読み物系も置いていますが、ヨーロッパのこれらの書店にはどの書店も置いていませんでした。

「D:ライフスタイル提案型」は、「C:アート」と重なるところもあるんですが、違いは本以外にも雑貨も数多く置いて、アートにそこまで興味がない人でも楽しめるようになっているところだと思います。「C:アート」への入門者向けの入り口、もしくはそこまでアートに興味はないけどワンランク上のライフスタイルを楽しむためにたまにはアートなものを買いたい、という人が利用するところかと思います。個人的にはこういう書店が一番好みです。

WYPweb  「ヨーロッパの人気書店、4つの形態」より

ライフスタイル提案型本屋の次は何なのか?

続けて川口さんに聞きたかったところが「ライフスタイル提案型本屋の次」についてです。

SPBSイベントでも話題にあがっていましたが、

「確かに日本でもライフスタイル提案型本屋は流行ってきているが、これはいつまでも続かないだろう。実際にSPBSはライフスタイル提案型本屋と言えると思うが、もう次を探している人もいる。この次はなんだろう?」

という問いです。

他の場所(どこかは忘れてしまいました)で聞いたのですが、SPBSは開店当初、尖った(独自の)品揃えで観光客など一見客がよく来ていたけど、地元のお客さんには根付かなかったようなのです。そこで、地元に寄り添った品揃えを意識するようになった、と(例えば、ジャンプなどどこにでもある週刊誌を置いたり)。

この話から、ぼくはライフスタイル提案型本屋は、その色を残しつつ、「街の本屋を更新するような方向性」に向かうのではないかと考えました。具体的には、オシャレなものですとSPBSはもちろんnostos booksやSNOW SHOVELING、B&Bに天狼院書店(この2店を外してはいけません!)などですね。ローカルなものですと古書往来座や古書ほうろう、流浪堂、往来堂書店など。
こういったように(本来はもっと力があるけれど現在は)どこに行っても同じような品揃えになってしまった「いままでの街の本屋」と、そこにしかないような本や雑貨が置いてあったり、店主に会いに行ったり、空間を楽しんだりといったライフスタイル提案型本屋の間に「次の本屋」があるように思うのです。

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ライフスタイル提案型本屋の品揃えは似通っている?

後述しますが、国を問わず同じような世代のお客さんを相手にしているような本屋の品揃えは似通っているようですね。まったく同じというわけではなく定番商品が同じ(『KINFOLK』など。代官山蔦屋書店のマガジンストリートをイメージしてください)。

この定番商品に加えて、それぞれのお店が古本やzineやリトルプレス、さらには自ら出版を行う(SPBSやチエノワブックストア、古書ビビビ)。定番商品と独自性を持った商品の構成比(さらには並べ方)は難しいところでしょうが、だからこそ、そこに各店の個性が出るのだと思います。

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独自の視点・品揃えをもつ本屋

そう話すと、川口さんは山口県にある「ロバの本屋」の話をします。山の中にある本屋なのですが、都内の店とはぜんぜん違う品揃えで、独自の視点がおもしろいそうなのです。「既存の枠組みの中でもここまで独自性を出せるのか」と驚かれていました。
これを聞いたとき全国流通には乗りにくい本が地方にはあることを思い出しました。地方独自の出版社が出す本です(沖縄が顕著だそうです(『本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)』より)。
定番商品に加え、zineや雑貨。さらに地方出版社の本。どれもが地域に根ざしたものにできれば、その店の独自性はとても高いものになるでしょう。ロバの本屋。とても行きたくなりました。

定番商品ってどういうの?

ところで、ヨーロッパの書店の定番商品とは具体的にどんなものでしょうか?

雑貨についてはナノブロックやモレスキン、バックサック、チェキなどなどで、「どこかしらが情報のハブになっており、皆がそこを参照するから同じになるのではないか?」とのことでした。

雑誌については、先述したように代官山蔦屋書店のマガジンストリートにあるような品揃えです(実際、ヨーロッパのライフスタイル提案型書店にあるような雑誌は代官山蔦屋書店にも結構置いてあるそうです)。

同世代は同じものを見ている?

先述したように、国を問わず同じような世代のお客さんを相手にしているような本屋の品揃えが似通っているとすれば、国が違っていても同世代は同じものを見ているのではないか、ということが言えます。インターネットがこれだけ普及している「いま」。文化は距離の壁を超えているんですね。

そう聞くと、川口さんも同じようなことを考えていたようで、例えば、ヨーロッパだけじゃなくてアジアにもKINFOLKは必ずあるし、デンマークの雑誌編集長に日本のことについて聞いた際には、日本人で知っているのは藤原ヒロシだったりしたこともあったそうです。日本のカルチャー好きなひとが知っているものをこの編集長も知っていたのですね。

実例を知れたのは収穫でした。

ヨーロッパのライフスタイル提案型本屋と日本のライフスタイル提案型本屋の違いは?

さて、ライフスタイル提案型本屋の話に戻ります。同じライフスタイル提案型本屋でもヨーロッパと日本で違う点はあるのでしょうか?

これはおそらくですが、ライフスタイル提案型本屋のターゲットとなる客層はヨーロッパも日本でも同じように思います。20代〜30代です。これと同世代は同じものを見ているということを考えると、違いはないのではないかとぼくは考えました。
聞いてみると、実際は「少し違うかもしれない」という程度の差のようです。日本の本屋に置いてあるライフスタイル雑貨も雑誌も同じようなイメージだったとのこと。

ただし、雑貨については日本とヨーロッパで置いてあるものが違うようです。と言いますか、日本国内は日本国内で同じような雑貨で、ヨーロッパ内はヨーロッパ内で同じような雑貨が置いてあるとのこと。言語の違いが大きいのかもしれませんが、ならば雑誌についてはヨーロッパと日本で差があまりないのはどういうことなのか。謎がひとつ残りました。

ライフスタイル提案型本屋とその先

以上が、川口さんからのお話とそこから考えたことでした。

得たことは、以下の3つ。
  • ライフスタイル提案型本屋という括り方とその先
  • 固定的な流通構造の中で独自性をどうやって出すかという切り口
  • 国は関係なく世代によって見ているものが変わること
特に重要なのがひとつめの「ライフスタイル提案型本屋という括り方とその先」で、これは昨年書いたB&Bと天狼院書店を対比した記事を別の角度から整理できたように思います。3つめについても大雑把に流れを捉える際の参考としてはとても重要な示唆でした。十年以上先のことを考えると国内だけを見ていてはいけませんからね。

ところで、実は、今回の4形態を日本に当てはめるには軸を変える必要があるのかなとも思っていますが、それはまた次の機会に。
WYPの購入は以下まで。掛け値なしに素晴らしい雑誌だと思います。ぜひぜひご購入してご覧ください〜。

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