本屋探訪記vol.63:演劇人の発想が大阪文の里に「居留守文庫」をつくった

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ド素人なり何とか形にした『紙のトルタル』を売りに大阪に参りました。大阪着後、中一日ございましたので寄りたい本屋を木の向くまま風の吹くままにツイートしていたところ、あるお方からオススメ本屋さんのリプライが飛んできたではありませんか。

嬉しさのあまり緩み切った頬の筋肉を通勤電車内で軽やかに見せつけながらオススメ本屋さんのリンクに飛びますとございましたのが今回の本屋探訪記voi.64でお邪魔した「居留守文庫」さんでございます。ちなみに以下はサイトでの居留守文庫自己紹介文。

小さな木箱に本が詰まっています。ジャンル、テーマ、キーワード、著者、出版社…いろんな分類方法で、本を小分けしています。木箱は時には整然と、時には変な形に、思いのままに積み重ねることができます。探索するのが楽しくなるような空間で、本との素敵な出会いと発見、そしてくつろぎの時間を提供します。
居留守文庫では古本の買取・販売だけでなく、アーティストやお店のオーナーさんから一般の方まで出品できる委託販売やギャラリー展示などにも取り組んでいます。

(以下は2013年4月13日の記録である。)

まとめ

時間のない方のためにまとめです。
  • 品揃え:デザインやアート系が多めだが幅広い品揃え。
  • 雰囲気:本棚工場のような学校のような。DIYの香りがする。
  • 立地:文の里駅から徒歩10分ほど。知らないと見つけられないだろう。
大阪市阿倍野区文の里3-4-29
TEL:06-6654-3932/090-6130-4168
Mail:book@irusubunko.com
URL:http://www.irusubunko.com/
Twitter:https://twitter.com/kishikonchu

大阪文の里駅から徒歩4分

驚くのが立地である。文の里というから本の街かと思いきや本屋は見かけない。あるのは学校と寂れた商店街のみである。大阪弁のリズミカルな放送が寂しさをより際立たせていた。
その商店街を抜け学校の横を抜けた先の住宅街の中にひっそりと杉の香りが漂っている一体なんだろうと思ったらそこにあるのが居留守文庫だ。こんな場所でどうやってやっていくのか。心配になりながらドアを開け店内に入った。

杉の香りと自転車と

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入ると外に出たときは「ひっそり」程度だった香りが確かな存在感を持ち始める。杉の香りだ。安心する。そこに流れているのは癒し系のBGM。住宅街の一角にこんな素敵スペースを作りだすだなんて凄いぞ居留守文庫! お茶でも出してくれたら言うことないぞ!

初めに目についたのが自転車である。おそらく店主のものだろうがなぜ店内にあるのか。ここまで堂々と鎮座されているとインテリアの一種として飾っているのかと考えてしまう。だが、そこはかとなく漂う生活感。やっぱり店主の普段遣いだろう。
さて、これ以上自転車について書いたって仕方がない。ぼくは本屋を見に来たのだ。ここは自転車屋ではない本屋である。本屋について書かねばならない。

変幻自在の「箱馬」本棚

居留守文庫の一番の特徴はその本棚にある。木箱が積み重なっているだけの本棚なのだ。だから、縦に積んでも横に積んでも自由自在。椅子にすることもできるし、壁一面に不規則に積めば目を楽しませてくれる面白本棚だ。サイトの文章にこうある。

無数の「セル」と呼ばれる可動式の箱がある。セルに本を入れるとそれは本棚になる。座れば椅子になる。積み重ねて、その上で勉強を始めればそれは机ということになる。セルを高く積み重ねれば間仕切壁になり、個室を作ることだってできる

居留守文庫サイト コンセプトより 

演劇の小道具に「箱馬」というものがあるそうだ。舞台のちょっとした足場とかに使われるアレだ。箱馬は縦横に組み合わせて使うことで変幻自在に舞台を演出する。この「変幻自在で組み合わせ自由」という部分を本棚でやるとどうなるか。そう考えてできたのが居留守文庫の本棚なのだ。もちろん手作り。木工所で木をカットしてもらって後は自分で組み立てたらしい。このDIY感。堪らない!

「BOOK TRUCK」の三田修平さんも同じような本棚を使っていたことを思い出す。意外な繋がりを感じて内心ニヤッとしてしまった。

ギャラリーとイベントと委託販売と

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そんな風な変幻自在の本棚を作るくらいだから店主の頭も柔軟なのだろう。ギャラリーやイベントも行い、本棚を一部委託販売用に貸してもいる。レンタルボックスでもあるという訳なのだ。しかも、この比率がその時々で変化するのだ。これは凄い。業態までも変幻自在なのだろうか。ぼくが行ったときはギャラリーの展示があったが、これが終われば次の展示がしばらくないので委託販売中の本棚をもっと目立たせるように模様替えを行うと店主が楽しそうに話していた。

レイアウト

それでは、居留守文庫のレイアウトについて書いていこう。とは言っても箱馬本棚である。次に来たときはどうなっているか分からない。もしかしたら明日には既に違うレイアウトになっているかもしれない。だから、「ぼくが行ったときはこうだったのだ」と考えて欲しい。

店舗は奥に広い長方形で入口から入ってすぐは少し狭い通路(とは言っても自転車が置いてあるくらいなので3人は通れるくらいの広さ)。もちろん両側の壁は本棚だ。左手の壁の上半分が途中で無くなってその分はレジカウンターとなっていて中には店主の岸昆虫さんが作業をされている。もちろん下半分は本棚だ。

奥に広がる空間は天井も高く気持ちが良い。入口すぐ右側の腰から下くらいの位置までの壁棚がそのまま続いている。突き当りは喫煙室のような作業部屋のような中庭のようなもの。ドアを開けると急に緑があったので驚いた。
空間の中心には段ボールの上に木のテーブルを置いた平台。箱馬もそうだが不格好でも自分の手で作り出そうとしているところに好意を抱く。素晴らしい。

左奥の壁には一面の箱馬壁棚がある。縦横自由自在に組み上げられた本棚はまさしく圧巻だ。一通りレイアウトを見て入口に戻ろうとすると天井まで届く箱馬柱に邪魔される。これもまた面白い。

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箱馬ごとでテーマを分ける

さて、そんなこんなで一部(入口から入ってす左手の壁棚と平台)を除きほぼ箱馬本棚の居留守文庫。なんとひとつひとつの箱馬でテーマが違うらしい。ぼくの少ない知識では分からないものが多かったが分かりやすいものもあって面白かった。例えば東野圭吾など著者で区切ったものだと分かりやすい。どの箱馬がどんなテーマになっているのか考えながら本棚を見るのも面白いだろう。

小さな木箱に本が詰まっています。ジャンル、テーマ、キーワード、著者、出版社…いろんな分類方法で、本を小分けしています。木箱は時には整然と、時には変な形に、思いのままに積み重ねることができます。探索するのが楽しくなるような空間で、本との素敵な出会いと発見、そしてくつろぎの時間を提供します。

居留守文庫サイトより

入ってすぐ左手の壁棚とレジ周り

では、軽く本棚を紹介していこう。もちろんこの紹介もレイアウトと同じでいつ変わるか分からない。さらに、居留守文庫は古本屋である。だから、いつもよりかは省略して見ていくことにする。

まず、入ってすぐ左手のの壁棚からである。面陳棚のここには洋書やデザイン書が飾られている。『遊びの美術』や『ブリューゲルさかさまの世界』などだ。レジ周りには文章読本や本屋関係の本など本の本が置かれている。

そのほか右の壁棚、テーブル平台、奥の壁一面箱馬本棚、途中の箱馬柱

では、箱馬を見ていこう。箱馬に関してはいちいち位置を書いていっても仕方ないので、全体感だけ書いていく。

入ってすぐ右の壁棚

ここは、文芸からアートから何でも揃っている。
東野圭吾、家、子供向け、食、ユーモア、児童書、動物、心理、文房具、旅、マンガ、雑誌などなどなど。

壁一面の箱馬本棚

ここは、アートや写真系が多い。いちいち上げていったらキリがないが、『本橋成一の屠場』、『ジョセフクーデルカのプラハ侵攻1968』などだ。図版、展覧会目録、画集、『ボリス・ヴィアン全集』や河出世界文学全集など全集もある。ちなみに一番左奥にはコミックも置かれている。

途中の箱馬柱とその周辺

ここには東野圭吾や村上春樹、武田泰淳や武田百合子、江戸川乱歩、司馬遼太郎、三島由紀夫などの文芸のほかにも思想系、さらに周辺で柱のレジの影にあたる部分には雑誌が並べられている。『東京人』、『現代思想』、『ユリイカ』、『スタジオボイス』、『一枚の檜』、『コヨーテ』、『風の旅人』、『DDD』、『インパクション』などだ。

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テーマが合えば大きさなんて関係ない

最近の独立系本屋さんではよくあることだが、ここ居留守文庫でも文庫も大判本も単行本も新書も関係なしに置かれている。とにかく箱馬一つごとのテーマに沿ったものを詰め込んでいる感じだ。一つずつのテーマの本が少ない(25冊前後だろう)ので見ていて負担にならないのが凄い。

幅広い品ぞろえ

さて、居留守文庫はこれで全部だ。全体の割合はアート二割、漫画二割、社会哲学ルポ三割、読み物エッセイ一割、雑誌と演劇合わせて一割くらいといったものだろう。店主が演劇出身の割には演劇の本が少なくアート系を中心に幅広い品ぞろえだと感じた。先の往来座のように古本屋でありながら「街の本屋さん」としても使いやすそうである。

居留守文庫は新しいDIY本屋さんだ

本棚も自作。販売するのは集めてきた古本。しかし、ギャラリーにもなり、イベント会場にもなり、委託販売(レンタル本棚)も行っている。DIYと言えば「何もかも自分でやる」といったように受け取られる方もいるかと思うが、居留守文庫は違う。自分でできることは自分でやり、だが同時に外からの風も受け入れる。風通しの良い新しいDIY本屋さんなのだ。
ちなみに階段があったので二階も店舗かと聞いてみると、二階は住居でここに住んでいるらしい。ここまで褒めて来ているが良く考えれば、箱馬の再配置はそれだけで一大事である。相当の労力を必要とするはずだ。それが店舗兼住居であるとなれば別である。中や関係なく作業ができる。もちろんしんどいだろうが、「生きる様に働く」という言葉がある。本屋に住みながら働くということは本当に幸せなことであるかのようにぼくには思えた。というかこんな本屋さんやりたいよ!

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