本屋探訪記vol.13:京都市役所前にある新刊書店「三月書房」は棚の店

三月書房

本屋探訪記第13弾は京都市役所近くの新刊書店「三月書房」(以下は2011年5月11日時点での記録)。


まとめ

まず、時間の無い方のために手短にまとめたものを書いておく。
  • 品揃え:大型書店や駅前書店で売れるような本は少ししか置いていないがその分、厳選されたセレクトに導かれて面白い発見ができる。見た目からは想像もできないワンダーランド本屋
  • 雰囲気:いわゆる古くからある町の本屋さん
  • 値段:基本新刊だが、バーゲンブックの場合、40~70%引き
  • 立地:京都市役所よりさらに北、観光客は来にくい場所にある。ホームページを見ると短歌や詩、俳句が売りのようだし、きっと常連客で成り立っているのだろう
  • 備考:検索したら結構書いている人が多かった。有名な本屋さんみたいだ
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京都市中京区寺町通二条上ル西側
TEL:075-231-1924 FAX:075-231-0125 営業時間:平日・11:00am~07:00pm(火曜・定休)  日祝休日・12:00pm~06:00pm(火曜が祝日の場合は営業) 年休:正月(1月1日~4日) お盆(8月13日頃に3日間ほど)

京都の文脈棚

京都市役所を左手に見ながら北に進み、二条通を西に向かって道なりに進んでいくと、道が曲がって北に向かうようになる。その北に向かうようになってすぐの所に、いわゆる「町の本屋さん」のような佇まいの書店がある。そこが「三月書房」だ。 そもそも三月書房に行こうと思ったきっかけが、以前読んだ『棚は生きている』で著者が棚作りが秀逸な店として挙げていたからだった。そのときはどんな店だろうとワクワクしながら行ったのだが、そのいかにも「町の本屋さん」といったたたずまいに正直、戸惑ってしまった。だが、侮るなかれ、三月書房は『棚は生きている』で紹介されている通り「棚」の店なのだ。

三月書房のハード面

サブカルやアートが強み?

店構えはいわゆる街の本屋さんと特に変わらない。店舗は一階部分のみの約6畳くらいのスペースである。入り口は店に向かって左側の1つのみで少し狭いように思うが、常に開けっ放しのため閉塞感は覚えない。 奥に広い縦長の店内には、入ってすぐの右手、外に面したところに雑誌コーナー(京都関連、仏教関連、猫)がある。外から目立つようにはしてあるが、中からは眺めにくいことを考えると書店には珍しく売れ筋ではないのだろう。入ってすぐの左手にはガラスケースがあり、中にはジャーナリズムや古本屋についての本、水木しげるの本、白洲正子の本などが並んでいる。
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この時点でただの書店ではないことが分かるだろう。だが、これだけではサブカルや芸術が強みなのかと勘違いしてしまうと思う。判断を下すのはまだ早い。

店舗左側の通路

奥に入ってみる。すると店を2つの通路に分ける棚が2つあり、壁はもちろん全て本棚。突き当りの正面には優しそうなおじいさん(店主だと思われる)がカウンターの向こうに座っている。入って左手、ガラスケースの奥には、デザインや伝統芸能に混じって新刊の小説がある。 さらに奥にはアンティーク家具や彫刻、写真、建築などアート系の本、絵本や岡本太郎など現代美術の本、廃墟や人形、エロなどサブカル系の本(でも、真面目な本)、中原中也や寺山修司など近代詩、中井英男や森茉莉、渋沢龍彦など幻想文学、坪内祐三や海野弘、小谷野敦など批評系、これ以上は長くなってくるので割愛するが、その他にも大まかに現代詩や俳句、日本史・世界史、民俗学、言語学、文学論などなど。 振り返ってカウンター手前側から店の真ん中の棚を見て店の入り口にまで進んでいく。この真ん中の棚の入り口側には、ロシア文学など海外文学から思想を少しと、後は美術書や食・料理、酒の本、音楽系の本、詩、書店や出版に関する本の雑誌やハードカバー、大判本が置かれている。

店舗右側の通路

真ん中の棚の裏側、店に入って右手の方の側には、文庫をメインに現代美術やエッセイ、介護、落語や能、狂言など古典芸能の本、園芸の本、食・料理・酒の本、文学エッセイ、社会系ルポ、鉄道や山などアウトドア系、古典文学や西洋の詩などがある。 ここで、カウンターに再び辿り着くことになる。真ん中の棚をカウンター左横から入り口に戻りカウンター右横に着くまで、ぐるっと一周した格好だ。カウンターから視線を上に上げるとそこにも棚があり、そのままカウンター右横の壁棚に流れが続いているようだ(これが最後の棚)。 カウンター側から述べていこう。まず現代詩が多く棚2つ分くらいはあったと思う。そしてそのコーナーが終わると、シュタイナー関連の本や差別(同和とか人種差別とか)関連本、朝鮮や中東、イスラム世界など現代社会に関する本。そして、昭和史(日本赤軍など)、ジェンダー、社会学となっていき、海外文学、戦争、現代批評、宗教、教育となる。 大体カウンター右横の壁棚を半分ほど進んだわけだが、この辺りから科学に関する本が多くなってくる。癌など健康関連本、医療の専門書、心理学関連の本などだ。 これでカウンター横の壁棚の3分の2を見終わったことになる。ここからは、下段部分に岩波文庫があり、上段にしりあがり寿や花輪和一などのサブカル系コミックが並ぶようになる。
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店の入り口(ガラス戸)の右側に面した角に木の台が置かれ、上にコミックの続きが(同じくサブカル系、『テルマエ・ロマエ』など売れ筋も僅かだがある)並べられている。 これで、店を一周したことになるわけだが上述した棚以外に足元のダンボール箱にそれぞれの棚に即した本が置いてある(最大限、スペースを活用しようとする心意気を感じる)。並べたい本が溢れ出た感じだ。 さて、三月書房のハードについては書き終えた。以下からは三月書房のソフト面について書いていきたい。

三月書房のソフト面

流れるような棚構成

三月書房の特色は2つある。「棚に明確なジャンルがないこと」と「豊富なバーゲンブック」だ。 1つめについて、棚ごとには明確なジャンル分けがされてはいないのだが、棚の構成が自然である。デザインやアートから現代舞踊、サブカル系を経て幻想文学になっていき、そこから現代詩、歴史関係の本になったりしている。この棚は文化に関する棚であることを思わせるのだ(入ってすぐの左の壁棚)。 そのままの流れで店の壁棚を見ていくと、現代詩からシュタイナー教育、差別問題やジェンダー、教育や社会学など社会問題を扱う棚になる。次に医学書や心理学など専門的なコーナーとなりいったん流れが途切れる(カウンター右横の棚、奥の3分の2)。 ここまでの棚は学問の棚と言えるだろう。 そして、この棚の先には岩波文庫とサブカル漫画が同じ視線上に置かれている。これは学問とサブカルチャーは意外と親和性が高いという主張だろうか。真ん中の棚(入り口側)は音楽や古典芸能、美術書、詩など主にクリエイティブな構成に。 真ん中の棚(奥側)は文庫を中心に、介護や園芸、鉄道、古典文学、西洋の詩などなど、インドア派からアウトドア派まで家族で楽しめるような構成になっていたりする(これは少し強引かも)。 ジャンル分けが明確でなく「流れる川」のような棚構成は見ていて非常にワクワクした。

本のキュレーションってこういうことかも

特に音楽のコーナーに本秀康の「レコスケくん」が置かれていたり、ユングの隣にロリコンに関する本があったり、民主主義→サンデル→蘇るリバイアサンの流れなどを見ると、もう「してやられた感」が凄い。 「本のキュレーションってこういうことなのかもな」と独りごちてしまうほどだ。

豊富なバーゲンブック

二つめについては、読んで字のごとく「三月書房」は「バーゲンブックが豊富」である。 店を一周して紹介した棚の3分の1ほどは全てバーゲンブックだ。通常だと「バーゲンブックはこちら」と分けて置かれることが多いバーゲンブックが通常価格の棚の中に当然のように収まっている。分かりづらくないかと言われればそんなことはなくて、バーゲンブックには帯の部分に割引率が書かれた白い紙が巻かれており、一見して分かるようになっている。 ここで、考えてもらいたい。棚構成が素晴らしい店がバーゲンブックをその構成を壊さずに並べている。そのとき、何が僕の中に起こったか。 そりゃ、買うでしょう(笑) というわけで、既に月の予算はオーバーしているのに2冊買ってしまった。しかもその内、一冊は新刊だし。 一冊はクラフトエヴィング商会の「世界で一番しあわせな屋上」(クラフトエヴィング商会は扱っていてもこのシリーズが置いてる書店は少ない。あることに感動したので新刊だけど思わず購入)。
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もう一冊は「本の美術誌」(これはバーゲンブックで60%オフだったし、美術品としての本についても知っておきたいので購入)。
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品揃えもピカ一

棚構成だけでなく、品揃えという点でも、ブックオフで働いていた頃、先輩に教えて頂いたその筋では有名な人が軒並み揃っていたし、かと思うと、現代詩などマニアックな分野も扱っていたりと幅も広く、店主の本に対する造詣の深さと情熱をひしひしと感じた充実の書店だった。

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